ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅣⅩⅦ 

 明恵母さんは、朝から待っていたらしい。家の前に車を停めると、直ぐ玄関口に顔を覗かせた。
「いつ来るかと、落ち着かなかったわ。お帰りなさい」
 その様子に俺と真美は、顔を綻ばせる。
「ただいま、お母さん!」
 真美は、明恵母さんに抱きついた。俺は、目を合わせ軽く頷く。
「お昼は食べたの? お腹、空いてない? 簡単なもの作ろうか?」
 矢継ぎ早に質問する。
「うふふ・・、お母さん! 私たち、お腹が破裂寸前よ」
「あら、そんなに美味しいものを、ふたりだけで食べたの? 狡いのね、私を誘わないで・・」
 俺と真美は、顔を見合わせた。
「ごめんなさい、お母さん・・」
 真美は明恵母さんの肩を優しく抱く。
「いいのよ。ふたりだけの時間に、邪魔したくないもの」
「あ~、お母さん! 次は、必ず誘うから・・」
「分かったわ。さあ、紅茶を飲むでしょう? 美味しい和菓子があるの」
 キッチンのテーブルに俺はひとり座る。相変わらず止まることのない会話を、真美は話し続けた。明恵母さんは真美との会話が嬉しく、笑みが絶えない様子だ。
「さあ・・、真美・・、座ってよ」
 三人が座り、漸く落ち着く。家族団らんの雰囲気だ。この雰囲気は、俺の夢でもあった。
「洸輝は、さっきから一言も話さない。どうしたの? 言葉を忘れたのかしら」
「いや、忘れてなんかいないよ。真美の機関銃が止まらないからだ」
「おほほ・・、そうね。話す機会が無いくらいに、連射していたもの」
「そうでしょう? 弾が切れ、やっと静かになった」
 真美の顔を窺うと、容赦しない目つきだった。俺は余計なことを言ったと後悔する。
「あっ、それで、今日は聞きたいことがあります」
 俺は話題を変える作戦に出た。だが、真美は諦めないようだ。俺は、構わずに話し続ける。
「実は、真美の考えなんですが、俺の母さんの件で知りたいことが・・」
 真美が頷いた。上手く機嫌を取り戻せた。
「いいえ、機嫌はそのままよ」
「え~、騙された」
 明恵母さんは、ふたりの妙な会話に首を傾げる。

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