ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅡⅩⅢ 

 俺にとって、家族の絆はゼロだ。求めることもできない。親の顔や性格も知らない。もし、知る機会があっても、俺は断るつもりだ。今更知って、なんの意味も無い。ただ、混迷するだけで、なんの得にもならない。
「先生、家族の絆が運命であれば、絆の無い俺の運命は、どの様に考えればいいのですか?」
「いや、良く考えてご覧、君には大切な施設の仲間の絆があるよ」
「施設の仲間の絆ですか?」
「そうだよ。施設の仲間が家族じゃないのかな? 苦楽を共にして、育ったはずだ」
《そうだ。俺の家族は施設の仲間だ。着るものは順番に使い。食べるものは分け合った。喧嘩はするが、直ぐに笑う。誰かが悲しければ、みんなが一緒に泣いた》
「君の心の中に、彼らを思う気持ちが一杯に満たされている。アルバイトで稼いだ僅かな金額で、クリスマスや誕生日にプレゼントを買って渡しているね。だから、他の仲間も洸輝君を家族と思っているよ。間違いなく・・」
 真美が、昼食の用意ができたと知らせた。先生が立ち上がりキッチンへ行く。俺は黙って、後ろに従った。テーブルに着くと、お手製のカツ丼が運ばれてきた。
「うわ~っ、美味そうだなぁ。お腹がグウグウ鳴っているよ」
「熱いうちに食べてね」
「真美も手伝ったのかい?」
「もちろん、手伝ったわよ」
「え~、じゃぁ、味が心配だ」
 真美は頬を膨らませ、俺の肩を叩いた。
「何言ってんの、こんな美味しい味付けは、私しか作れませんからね。嫌なら、食べなくて結構よ」
「じょ、冗談だってば。真美の味付けなら最高だ!」
「嘘よ、奥さんの味付けよ。ふふ・・」
 ふたりの様子を見ていた先生と奥さんが、笑い出した。
「本当にふたりは仲がいいのね。昨日、会ったばかりと思えないわ。うふふ・・」
「いや、いや、やはり運命の結び付きなんだよ。このふたりは・・」
 先生の言葉に、真美が大きく頷く。
「そうでしょう。私が思っても、洸輝は信じないのよ。まったくおバカさんなの・・」
 俺は目の前のカツ丼に、涎を垂らすほど神経を集中している。
「はい、はい、誰かさんが食べたくて、目が血走っているわ。さあ、食べましょう」
「は~い、いただきま~す」
 真美が俺の体を、肩で小突きながら睨む。俺は無視して食べる。
「ふたりは、面白いなぁ~。家族で一緒に食べているようだ」
「そうね・・。私たちに子供がいれば、こんな感じだったのでしょうね」

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