ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 Ⅲ 

「俺は、あなたを知りません。初めてですが・・」
「ええ、私もよ。だって、あのセミナーに参加したのは、今日が初めてですもの」
「いや、俺も初めて参加した」
 俺は、彼女の瞳を初めて見ることができた。
《なんだ! この瞳は・・。俺の魂が吸い込まれる。あ~、綺麗だなぁ~》
 彼女の瞳を見詰めたまま、俺の記憶は夢遊病者の様に歩き回る。
「そんなに見詰めないで、恥ずかしいわ」
 謎めく天使の声に、俺は目覚めた。
「ハッ! あ~、いやいや、失礼しました。余りにも、あなたの瞳が・・」
「それ以上のこと、話す必要はないわ!」
 彼女の表情が瞬時に険しくなった。俺は驚き声を失う。
「あっ、驚かせて、ごめんなさい。だって、あなたが何を考えているのか、私には見えているもの」
 険しさが消え、元の素顔に戻った。逆に、俺の方が強張った顔になる。
「ワォ~。そうだ、そうだよね。困ったな。何を考えればいいんだ」
「うふふ・・、平気よ。私が神経を集中しなければ、あなたの心は見えませんから・・」
 彼女の笑いと天使の声で、強張りは薄らいだ。
「本当に? あ~、良かった。俺の考えが丸裸って、嫌ですよ。あはは・・」
「ふふ・・、そうね。私も見たくないわ。ふふ・・」
 ふたりは、互いを見つめ合い笑った。そして、同時に目の前の紅茶を飲む。一息入れると、彼女は俺の顔を覗き見る。
《わっ、いかん。見られている。変なことは考えるなよ》
「心配しないで・・。ただ、あなたの顔を見ているだけよ」
 でも、俺は信じなかった。懸命に、心の中を無の境地にする。
「ダメだ。俺の心を抑えても、軽い脳みそが反応する。バカだな俺は・・」
 確かに、俺は疲れた。
《そう、俺は自然体で考え、自然体で行動すればいいんだ。彼女のことも》
「それで、俺を誘った理由は、なんでしょうか?」
「ええ、特に理由は無いの。セミナーで、先生があなたに興味を持ち、メモを渡したでしょう? それが知りたかっただけよ」
 俺は黙って聞いていた。
《俺にも、あの講師の考えが分からない。何故だ?》
「そうなの? 意味が分からないんだ」
《まるで以心伝心だ。やはり、俺の心が見えているんだな》
「そうさ、分からないよ」
 俺は隠す必要はないと判断し、彼女に見せるためポケットからメモを取り出した。彼女はメモの裏表を見る。

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