ウイルソン金井

創作小説。ロマンス、怪奇、ユーモアなど。多岐チャレンジ中。

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅧ

 救命ボートに戻るが、隅でジッと動かない黒ピカ。心配するブリ―リアがヤツの体に優しく触れる。ヤツはブリ―リアを抱きしめるが、大きすぎてハグができない。代わりに彼女がハグをすると、黒ピカが押し潰された。その滑稽な様子に、他の仲間たちが冷やかす。黒ピカが、ようやく照れ笑いを見せた。
 横浜を出港してから約一ヶ月、朝靄の静かなリオ・デ・ジャネイロ港に到着した。穏やかな海面を、数隻のタグボートに曳航され岸壁へ向かう。
 徐々に薄れる靄の中から、コルコバード丘のキリスト像が浮かび上がる。
「やっと着いたな。長い旅だった。この街は、なんと美しく素晴らしい光景なのだ。あのコルコバードの丘へ行き、ブラジルの陽光が燦々と降り注ぐリオ湾を一望したい」
「ぜひ、オイラも連れて行ってください。ところで、いつ降りるのですか?」
「うん、ブラジル支部から連絡が来るはずだ」
 しかし、一時間、二時間が過ぎても連絡がない。少々不安になってきた。ゴキジョージとブリカーノがバタバタと走って来る。
「リーダー・ゴキータ! オリンピックは終了しましたが、パラリンピックがこれからだそうです。未だに検疫が厳しく、大会委員会から次の寄港地サントス港へ行くよう、指示が出ました」
「そうか、ではサントス港へ行こう。黒ピカ、コルコバードの丘は中止だ。非常に残念だな」
「はい、リーダー」
 ところが、長い船内生活に我慢できない仲間が、密かに相談し合い集団で強行下船を開始したのである。
「ダメだ! 降りたらいかん! 次のサントス港へ、一緒に行くんだ」
 ワシらの仲間が、必死に止めたが降りてしまった。アマゾンの仲間は、通訳が殺され事情が分からない様子。黒ピカが近寄り、慣れないインディオ語とジェスチャーで説得する。
「オイラ、トモダチネ。ココ、オリル、アブナイヨ。オイラト、サントスイクネ」
 不思議にも、大きな翅を広げ同意した。
「いや~ぁ、ビックリした。お前の妙な言葉とジェスチャーが通じてしまった。意外だなぁ~。こりゃ、参ったぞ。いつの間に、言葉を覚えたんだ」
「いいえ、リーダーのご指導がお役にたちまして・・」
「下手な謙遜をするな! ワッハハ・・。次の大会は日本だ。お前を組織委員に推挙した方がいいな」
「うっそ、オイラが組織委員に、ですか? リーダー、冗談も程々に・・」
「いや、冗談ではない。本気だ」
「オイラは勉強もしていない、おバカさんですよ」
「人間どもは勉強する必要がある。でも、ワシらは仲間を思いやる精神が大切なんだ。お前は、仲間の死を悲しみ嘆く、困窮する仲間には心から手を差し伸べる。それで十分さ」


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