ウイルソン金井

創作小説。ロマンス、怪奇、ユーモアなど。多岐チャレンジ中。

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅨ

「でも、オイラは勉強をしたい。この旅で自分の知識が足りないことを知り、リーダーを目標に頑張りたいと思います」
「照れることを言うな! 旅はまだまだ続く、多くを感じて学ぶことが成長だ。それが、この旅の大切なお前の目的だよ」
「はい、リーダー。しっかり成長します」
《ワシは嬉しいぞ。一緒に旅をしながら、お前の成長を見て行けるとは・・》
 サントス港は、リオ港から南へ四百キロ。海岸山脈が目の前に広がる港は、コーヒー出荷と多くの移民を受け入れたことで知られている。翌日の早朝、そのサントス港に入港した。
 冬の冷気を含んだ風が、ワシらを出迎えた。
「リーダー、今は夏なのに、冬みたいな寒さだ」
《おっ、また疑問が始まったな》
「黒ピカ、ブラジルは南半球だ。北半球の日本が夏なら、ブラジルは冬だ。だから、日本が夏なら、ここは冬に決まっている。常識だ、分かったか?」
「ん? ベレンはブラジルだけど、真夏だった。リオは、これほど寒くはなかったよ」
「ふーっ、ブラジルの国土は広く、日本の二十四倍も大きい国だ。ベレンは赤道に近く、アマゾン地域だから常に夏の気候のままだ。南半球は、南に行くほど気温が下がる。ムフフ・・、日本とブラジルは昼と夜も反対だよ」
 黒ピカは目を見開き、上下左右を忙しなく見回す。
「え~、なんで~? どうして~? 上と下、右と左も違うの?」
「いや、それは同じだ。これは太陽と地球の自転に関連しているからだ。このお陰で、地球上のすべての生物が、生きて行ける自然の法則だよ」
「オイラには・・、何がなんで、何がどうして。もう、分かりましぇ~ん」
 ヤツは頭だけでなく心も吹っ飛んだ。
《止めた。いずれ、分かるだろう・・。ん! 待てよ。死ぬまで理解できないかも。いや、いや、ワシの血を受け継いでいる。大丈夫だろう・・》
 昼近くになると日差しが強くなり、気温が上昇した。仲間たちは寒さから解放され、行動がスムーズになる。一気に下船を始めた。
 ただ、埠頭の網の目に広がる線路が、素早い行動を妨げた。やむを得ず、人間どもの目を掠め、バラバラに行動する。閑散としたコーヒー貯蔵倉庫が、大会会場であった。
「皆さん、突然に変更となり、申し訳ございません。ジカ熱は冬のために落ち着きましたが、厳しい検疫は続いております。リオ港で強行下船した仲間たちは、全員が殺害されました。非常に残念ですが、ご報告いたします」
 ブラジル支部の実行委員兼司会のマリアブリータから、挨拶と報告が行われると会場から悲痛の声が上がる。
「え、えーっ、本当なの。気の毒に・・」
「なんと悲しく痛ましいことだ。苦労してブラジルまで来たのに・・」
「そうだ、そうだ。この大会は、延期すべきだった」

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