ウイルソン金井

創作小説。ロマンス、怪奇、ユーモアなど。多岐チャレンジ中。

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅢ

「それは、ハワイの仲間だ。アローハ(こんにちは)と挨拶して、英語で話せばいいのだ。まさか、英語がダメなのか?」
「話せませんよ。日本語だけです。オイラには、勉強する暇もなければできる頭も無い。リーダーは話せるのですか?」
「ああ、ワシの棲み処は中央公民館だった。英語教室や国際交流の集いがあり、知らぬ間に耳で覚えてしまった。ゴキ江や子供たちは、ペラペラだ。でもな、黒ピカよ。話せなくとも、友達になれば以心伝心だ」
「えっ! 石に電信柱?」
 また意味不明な聞き覚えのない言葉に、黒ピカは戸惑う。
「お前の耳は、可笑しいのか?」
「いえ、オイラの耳は、笑うほど可笑しくないです」
 真剣な眼差しで、ワシに反論する。
「ワシが言う可笑しいとは、変だという意味だ。以心伝心とは、信頼関係だけで不要な言葉はいらない。心と心が通じ合うことだ」
「あっ、なるヘソ。ガッテン承知のスケ」
 黒ピカの訳の分からぬ反応に、ワシは愕然とする。これ以上の会話は無理と考え、プイッとそっぽを向く。ヤツは哀れな様子で、トボトボとどこかへ行ってしまった。
 しかし、翌日にはいつもの黒ピカに戻り、陽気な顔でワシに話しかけた。
「リーダー。アローハの仲間と、石に電信柱ができましたよ。簡単でした」
 ワシは、敢えて誤りを訂正せずに、にこやかに聞く。
「そうか、それでどうした?」
「はい、黙ったままキッチンで一緒に食事ができました」
「ふぅ~、それは・・、良かったな」
 ホノルルを出港して五日目。ロサンジェルスのロングビーチに入港。またしても、下船できなかった。黒ピカは意気消沈し、船内を夢遊病者のように歩く。
 メキシコのアカプルコ沖を通過中に、大事件が勃発した。
 ワシが仮の棲み処で休んでいると、人間どもの話が聞こえてきた。ワシらを撲滅する計画である。確かに、ロサンジェルスから多くの仲間が乗船した。彼らは人間どもに気を配らず、自由奔放な生活を始めたからである。
《これは大変だ。仲間に早く知らせないと・・》
 ワシは、キッチンに近い現在の棲み処を、デッキの救命ボートに移動する。黒ピカからハワイの仲間に注意を呼びかけた。
 救命ボートの中で、二日ほど過ごす。我慢の限界に近づく黒ピアに、もう一日だけ我慢しろと忠告する。だが、ヤツは仲間を心配して、救命ボートから飛び出して行った。
 仕方なく、ワシもヤツの後を追う。船内には、仲間の姿が見つからない。

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