ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

  嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅣ

 シャワー室から顔を見せたのは、黒ピカと友達になったハワイのゴキジョージであった。
「アローハ、ジャパニーズ・リーダー!」
「やあ、アローハ! ゴキジョージ、大丈夫でしたか?」
「はい、ハワイのメンバーはノウ プロブレム(問題ない)あなたのお陰です。マハロ(ありがとう)」
「いや、とんでもない。ところで、黒ピカを見ませんでしたか?」
「クロピーカ? ああ、キッチンにいましたよ」
《なにぃ、キッチン? ヤツは何を考えているんだ》
「マハロ、ゴキジョージ!」
 ワシは怒りと心配で、急ぎキッチンへ向かう。薄暗い中をソーッと覗いたが、黒ピカの姿はなかった。前の棲み処に立ち寄る。隅にうずくまる黒ピカを見つけた。ヤツは体を小刻みに震わせ、ひとり悲しみに泣いていた。
「ここに、いたのか。心配したぞ。ん? どうして泣いている?」
「ウウ・・、アメリカから乗った・・、仲間・・、無残な姿を見て・・。ウウ・・、知ら・・、ウウ・・、遅かった。オ、オイラの・・、責任だ~」
「そうか、残念だな。お前は本当に心の優しいヤツだなぁ。でも、お前の責任ではない」
《黒ピカよ。この試練は、お前に大切なことを教えている。決して、無駄ではない。喜びの感情は、心を寛大にさせる。しかし、仲間を悼む心は、無限の強さをお前に与えた。より強くなれ!》
 翌日、太平洋からパナマ運河を抜け、カリブ海へ。パナマ運河は熱帯雨林に囲まれ、山脈中央のガトゥン湖を活用した雄大な景色であった。その光景を眺めたワシは、建設した人間どもの知恵と大自然の力に圧倒される。
 ほぼ半日を掛け、ゆっくりと運河を通過した。カリブ海側のコロン港に停泊する。ここで荷を降ろす作業が始まった。ワシは直ぐに下船することを、黒ピカに伝えた。
「間違いなく、本当に下船できるのですね?」
「そうだ、中米の国を見学する。行くか?」
「勿論です。やっと、外国が見られる。良かったなぁ」
 黒ピカは、子供のように顔を輝かせ、翅を広げて喜ぶ。
 急ぎ下船するとバスの下に隠れ、港から近いクリストバルの町へ行く。十分ほどで着いた。
「どうだ、黒ピカよ」
「はい、リーダー。珍しいフルーツを試食したいです」
「そうだな。ワシも試食したい」
 中央食品市場には、刺激の強い中米特有の匂いが満ちていた。黒ピカの腹がグルグルと鳴り、ワシの腹にドンドンと響く。
 無我夢中で食べているワシの背中を、黒ピカの触角がチョンチョンと叩く。
「なんだ! 忙しいのに・・」
「リ、リーダー! オイラの横に・・」

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