漂泊の慕情 Ⅹ
その夜、私の荷物はそのままにして、彼の部屋で過ごす。ベッドの中で愛を確かめ、少しでも彼の不安を慰めた。
翌日は、彼の運転で州立公園やマウナ・ケア山などを観光する。彼は歩くとき、常に私の手を携え不安から逃れようとした。私はできる限り甘え、彼の恐怖を和らげようと努める。
夕日が沈むハワイの海を眺めながら、彼に話し掛けた。
「一緒に住もう? 私が傍にいれば、いつでもあなたを慰められるわ。私が、あなたを守る。だから、安心して帰りましょう・・」
「うん・・、帰ろうか。彷徨い逃げるより、この症状に耐える力が必要だ。その力が君の愛であると分かった」
「そうよ、私もあなたが必要なの。ふたりで原因を探しましょう。必ず治療があるはずよ。そういえば、ハワイ島に来てからは平気なの?」
「うん、そうなんだ。ハワイ島に来てから、何も起こらなかった」
「ハワイ島の火山の神様が、あなたの悪いところを取り除いてくれたのよ」
その翌日、私たちはハワイ島を離れ、日本へ帰った。