漂泊の慕情 Ⅷ
私は会社に事情を説明して、一週間の有給休暇を取得。直ぐに旅行の手続きを行なう。
三日後に、私は羽田発のハワイアン航空に乗る。およそ七時間のフライトでコナ国際空港に降り立った。開放的な空港に目の前に広がる溶岩帯は、やはりホノルルとは異なるハワイの気分を味わう。
前回は、気の合う友人たちと訪れリッチなホテルに宿泊したが、今回は旅行気分ではない。ノースコナ、ホルマロアのコナ・ホテルに宿泊。
このホテルを選んだ理由は、宿泊費も安くオーナーが日系人。もしかしたら、彼も選ぶであろうと考えたからである。行く前に、確かめるつもりであったが、個人情報で尋ねることができなかった。
ピンクの二階建てのホテル。二階の奥が私の部屋であった。旅装を解き、階下のフロントへ行きレンタル・カーを予約する。
「このホテルには、日本人が多く泊まるの?」
フロントの若い女性従業員に、普通の会話として聞いてみる。案の定、警戒することなく答えてくれた。
「ええ、ほとんどが日本人よ」
「そう、今も宿泊しているのね?」
「いるわよ・・。5~6人かな・・」
「みんな、長く利用するのかしら?」
「いいえ、二日位よ」
「でも、でも長い人もいるのでしょう?」
「ん~、いないわ」
予想が外れ、私はがっかり意気消沈する。
「そうなの・・」
フゥ~とため息を吐く。仕方なく、部屋に戻ろうとする私に、彼女が答えた。
「あっ、ひとりいるわ。若い男性が・・、半月になるかな」
私は急ぎ彼女の前に戻る。
「え~、本当にいるの」
「ええ、でも、今はホノルルへ行っているわ。確か、二日後に戻る予定よ」
私は嬉しくて手を出したが、直ぐに引っ込める。心の中で感謝の強い握手をする。
「ありがとう・・」
名前を聞いても多分教えないだろうと思い、平静を装い静かに階段を上がる。私は部屋に戻っても、逸る心を抑えるのに大変だった。
「やった~、見つけたわ。良かった、あ~、良かったわ。でも、待って! 彼と決まったわけじゃない。落ち着いて、落ち着くのよ」
部屋の中を、呟きながらウロウロと歩き回る。
予定もなく、二泊も待たなければならない。レンタル・カーでパーカー牧場のワイメアのショッピングセンターやレインボー滝を観光する。何も感動することなく、虚しい観光だった。