ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅤⅩⅥ 

 目の前に曝け出された愛らしい体。目が奪われる清楚な下着姿だった。
「あら~、どうしたの? 丸裸と思ったの、残念でした。うふふ・・」
 言葉を失った俺に、千恵は嘲笑う。
 ずり落ちたバスタオルを拾い、ハンガーに掛けた。ボディー・シャンプーの香りが、俺の鼻腔を刺激する。
「うふふ・・、アハハ・・」
 複雑に絡み合う欲望と安堵が、俺を笑わせた。
「ん? 何が、そんなに面白いの?」
 奇策を講じた彼女が、俺の笑いに唖然とする。
「ハハ・・、千恵ちゃんの策に驚いただけさ・・」
「ふふ・・、だって、金ちゃんが私を見ようとしないからよ」
 確かに、俺は千恵の顔を避けていた。あの瞳はギリシャ神話のメドゥーサの視線だ。誘惑され石と化し、思いのままに恋するだろう。
「浴びて直ぐなら、誰だって着ていないと思うよ」
 千恵は一瞬俯いた。パッと顔を上げると、俺の瞳を捕獲する。
「分かった。じゃぁ、やり直すわ」
 突然に、下着に手を掛ける。俺は飛び上り、千恵の腕を掴む。
「ま、待てよ。そんなつもりじゃない」
 千恵がまじまじと俺を見上げる。凄く愛しい小さな顔。俺の心臓が高鳴る。
「私をふしだらな女と思い、バカにしているのね・・」
「・・・」
 遣る瀬無い思いに心が疼く。決して、嫌いじゃない。むしろ、俺の脳も心臓も千恵にメロメロだった。
「いいわ。私独りで行くから・・」
 俺の手を強引に振り払う。俺は慰めるつもりで、千恵を抱きしめてしまった。
「あぁ、俺が悪かった。ごめんよ」
「もう、金ちゃんのバカ!」
 千恵は俺の胸に泣きながら縋りつく。

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