ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅡⅩⅡ 

 あの頃、俺は悩んでいた。
 あの人か、夢か、どちらかを選択する必要があった。
 中学の時、意識の中に外国生活への憧れが、突如湧き上がった。ただ、自分でも理由が分からない。
 意識は、憧れから夢に変わる。その後、ずっと夢を追い求めてきた。
 ひょんなことから、あの人に出会う。
 それまでは、安易なときめきを恋と思っていた。だが、あの人には、かつて経験しない衝撃的な恋心を感じた。
 恋は、日々深まって行く。
 受動的な恋ではなく、すべてを捧げる能動的愛に変容した。
 俺は追い求めてきた夢を捨て、あの人を選択した。寝ても覚めても、前後、上下、どこを見ても彼女のことばかり。
 だが、ある日現実を知る。
 夏風邪を拗らせ、急きょ入院する。急性腎炎と診断された。
 俺は軽く考え、直ぐに退院すると思っていた。ところが、一ヶ月を過ぎても退院できなかった。
 次第に先の見えない不安が、俺の心を情緒不安定にさせる。無意味なことを詮索したり、現実味のない夢にうなされた。
 入院中の女性と親しく話す仲になった。本人から余命幾ばくも無いことを知らされる。点滴の管が外される時だけ、談話室で会話ができた。
 彼女にとっては、限られた短い時間だ。
 彼女は、俺より五歳年上であった。ほぼ生まれた時から、病院生活が続く。
 俺にとっては、他愛のない会話に過ぎない。だが、彼女にとっては初めて経験する異性との交際と考えているようだ。
 顔なじみの看護師から打ち明けられた。
「それほど、神経質にならないでね。話を聞いてあげれば、彼女は満足よ」
 俺は理解した。
 談話室へ行くと、いつも先に来て待っている。
「やあ、顔色が良さそうだね」
「うん、ありがとう。今日は、どんな話をしてくれるの?」
 

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