ウイルソン金井

創作小説。短編が主体ですが、長編小説も書きます。

創作小説を紹介
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

雨宿り  Ⅱ

 私はベッドから起き上がらず、そのまま横になり夢の中の状況を考えた。
《やはり現れた。ただ、場所が違う。それに和服姿ではなかった。どういうことだ。このまま毎晩、彼女と会うのだろうか》
 幾人かの知り合いに相談する。
「そんなの夢占いで調べてもらえば・・」
「お祓いした方がいいんじゃないの」
「誰かがあなたに恋をしていたけど、何かの理由で亡くなった。でも、諦められずに夢の中に現れる。ドラマチックね」
 なんと、好き勝手に言う。呆れた私は、それ以上の相談を止めてしまった。
 不思議なことに、それから一週間ほどは夢に現れなかった。ただ、却って気になり夢を見たいと思ってしまう。苛立ちの日々が続く。
《何故なんだ。散々惑わせておいて、ピタッと夢に現れなくなった》
 最初に巡り合った古い民家を探してみる。仕事帰りや暇を見つけては歩き回った。それらしい民家を探すが、しっくり合わない。何かが抜けている。
 半月後、特に考えることなく眠りに入った。
 雨の中をあてもなく歩いていると、後ろからヒタヒタと足音が聞こえた。私は立ち止まる。足音も止まった。私の背中がスーッと寒気を感じ取った。怖々と振り返り後ろを見るも、誰もいなかった。ホッとするが、急に前から声がした。
「あの~、ごめん・・」
 和服姿の女性が立っていた。私は突然のことで肝を冷やす。
「わっ、どど、どうして?」
 傘も差さずに立っていたのである。私は近寄り、傘の中に入れてしまった。冷ややかな風が頬を撫でた。
「ありがとう。でも、傘は必要ないわ」
「いや、濡れたら風邪ひきますから・・」
「そこの家で雨宿りするから、平気よ」
 彼女は、傘の下から近くの古い民家の軒先へ移った。私はフーッとため息を吐き、彼女の後を追う。
《オレは何をしているんだ。このまま帰ればいいじゃないか》
 心に反して、私は意味もなく古い民家の軒先に、肩を並べて雨宿りする。
「あ~、私の名前は・・」
「待って、私はあなたが誰だが知っているわ」
「えっ?」
「大河内 新之丞さんでしょう?」
「はい? 私は大河内 晋介ですが」
「嘘よ、そんな筈はないわ。嘘でしょう?」
 凄い形相で私を睨み、目の前から姿を消した。軒先をガタガタと揺らし、生臭い風が吹き荒れた。
 瞬間、私は目を覚ましパッと起き上がる。心臓がバクバクと音を立て、めまいがした。
寝る前に閉めた筈の窓が開いていた。外の生温かい風が吹き込み、レースのカーテンが風に煽られている。

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