謂れ無き存在 ⅦⅩⅢ
トーマス小父さんの案内で、センターの中を歩く。日本と余り変わらない風景だ。真美が、落ち着かない俺を心配している。俺の手をしっかり握り、離さないでいた。
「さあ、ここよ」
目の前のお店は、レンタル・ショップであった。
「トーマス小父さんに頼んでいたの」
「えっ、何を?」
真美と明恵母さんが目を合わせ、笑顔で頷く。トーマス小父さんと店員が、俺たちの方へ目を向けながら話している。店員がニコリと微笑み、俺と真美を呼んだ。
「洸輝、行きましょう」
俺は彼女の後に従う。別室に入ると、俺は目を見張るほど驚いた。
「どうかしら?」
なんと、そこには純白のウエディングドレスと白のスーツが、飾られていた。
「え~、これは・・」
俺は、続く言葉が出ない。
「早く着替えて、ダ~リン!」
「う、うん・・。でも、俺に似合うかな? それにサイズは?」
「心配ないわ。私が、先にサイズを知らせているから、合うはずよ」
真美の手際には恐れ入った。
「私は時間が掛かるから、洸輝、先に着替えて待っていてね」
俺は頷いたが、まだ信じられない。普通のスーツさえ着たことがない。俺は、店員の指示に従い、試着室で着替えた。
真美は、明恵母さんを呼び、着替えを手伝ってもらう。明恵母さんは、満面に笑顔が絶えず大喜びだ。
「洸輝君、私だけど」
オヤジさんが、試着室に顔を出した。
「おっ、いいじゃないか。似合うよ」
「そうですか? 照れ臭いですね」
姿見に映る自分に照れる。
《本当に、これは現実なんだろうか・・》
試着室から出ると、トーマス小父さんが待っていた。
「オ~、ザッツ グレート ワンダフル!」
「えっ、何?」
「ああ、最高だってさ」
トーマス小父さんの言葉が理解できなかった俺に、オヤジさんが教えてくれた。
「オウ、センキュウ! トーマス アンクル」