嫌われしもの 遥かな旅 ⅢⅩⅢ
ここは予想以上に居心地がよく、帰国の意思を消し去ろうとする。黒ピカもブリ―リアの計略に嵌ったようだ。
とうと三週間が過ぎてしまった。マリアブリータが仲間を呼び集め、賑やかな集団になっていた。
『ゴキ江! 待っていろ、今助けるからな! 追い駆けても、追い駆けても愛する妻に近づけない。ゴキ江~、ゴキ江~』
「リーダー! 起きてください! 大丈夫ですか? リーダー、目を開けてください」
黒ピカに体を揺すられ、目を覚ます。
「ふぅ~、やあ、なんだお前か?」
「どうしたのですか? うなされていましたが、嫌な夢でも、見たのですか?」
「ああ、ゴキ江が、助けを求めていたが、助けられない。心配だ。ゴキ江の身に何かが・・。早く帰らねば・・」
「そうですね。オイラも思っていました。ブリ―リアに話してきます」
《いつまでも、滞在してはいかん。きっぱりと決心するべきだ。竜宮城の浦島太郎になってしまう。ゴキ江の許に帰ろう。マリアブリータは、理解してくれるだろう》
その日の夜、ワシの気持ちを伝えた。
「やはりね・・。心の奥では、このまま残ることを願っていたわ。ただ、この日が必ず訪れると感じていた。幸せな日々を一緒に過ごせたこと、神様に感謝します。心配しないで、こんなに仲間が集まったから・・」
ワシに弱さを見せまいとするマリアブリータ。健気な様子に、ワシは抱きしめた。彼女の体が小刻みに震えている。
「身勝手なワシを許してくれ。会えて良かったよ。ワシの残りわずかな命、思い出は決して忘れない。あ~、マリアブリータ!」
「それで、いつ出発するのかしら?」
《ここで、躊躇して心を許す訳にはいかない。お互いに早く未練を断ち切らねば・・》
「うん、これからサントス港へ行く」
「えっ、今から?」
「うん・・」
「明日では、ダメかしら?」
「残念だが、ダメだ」
切ない思いで、きっぱりと伝える。黒ピカが、戻ってきた。
「リーダー、あの・・」
「黒ピカ! これから日本へ帰るぞ。直ぐにだ!」
「えっ、あ、はい! 良しきたガッテンだ。リーダー・・」
「それで、ブリ―リアとは、話ができたのか? 問題は無いだろうな」
「ん~、問題無いと言えば、無いですが。有ると言えば、有りますが・・」
はっきりしない黒ピカの様子に、ワシは苛立った。
「何が言いたいのだ。はっきりしろ! イライラするヤツだ」