ウイルソン金井

創作小説。ロマンス、怪奇、ユーモアなど。多岐チャレンジ中。

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

忘れ水 幾星霜  第四章 Ⅴ

 マルコスが早めに到着。北島、通訳のセルジオ、佐和と事務員のテレーザ。それに、群馬県人会の高山事務長。全員が揃ったところで、輝明は千香を支えて立ち上がる。
「突然に訪問した私たちのために、温かく迎えていただき感謝申し上げます。長い間、探し続けていた亜紀さんに会えることができました。幸せに過ごしていたことを、確認でき安心しました。それは、憩いの園の皆さんのお陰と思っています。
 また、今日、特別にお呼びしました県人会の高山さんには、以前、私が訪問した際にお世話になり、有難うございました。特に、北島さんには消息から滞在までご尽力をいただき、誠に感謝申し上げます。
 最後に、ご報告しますが、亜紀さんと私は結婚いたしました」
 亜紀は、顔をうっすら赤くして、はにかむ様子で椅子から立ち上がる。その場の全員が、驚くと同時に拍手をした。一番喜んだマルコスが席を立ち、テーブルを回り込み亜紀に抱きついた。
「マルシア! パラベンス(おめでとう)!」
 マルコスに続き、佐和とテレーザがハグをした。その様子を嬉しそうに眺める輝明や千香には、握手で祝いを伝える。北島が、乾杯の音頭を取った。
「おふたりのご結婚を祝し、サウーヂ(乾杯)!」
 乾杯後、にこやかな雰囲気で食事が始まる。大きな肉の塊が金属の串に刺され、ジュジュッと焼けた香ばしい匂い。食事の雰囲気をさらに盛り上げた。
「さっきは他のテーブルを見て驚いたけど、目の前にすると凄い迫力ね。あ~、元気だったらなぁ。たらふく食べられるのに、残念だわ。ねぇ、輝坊ちゃん」
「小さく食べ易く切ってあげるから、無理のない程度に味わってみるかい?」
「そうね、食べたいわ」
 輝明は柔らかい肉を選んで小さく切り、千香の皿に移す。それをフォークで口に運ぶ千香は、幾度も頷く。
「美味しい。とても美味しいわ。亜紀が羨ましい」
「何が、羨ましいの?」
「だって、こんな美味しい肉を毎日食べられるなんて・・」
「呆れた、いくら美味しいからと言って、毎日、レストランで食べられますか?」
「そうよね、日本だってレストランで松坂牛を毎日食べれるわけがないものね」
「そうでしょう」
 輝明が、次から次へと運ばれてくる肉に降参した様子。
「それにしても、この国の人は良く食べるなあ」
「運ばれてくる肉を、すべて食べるのではなく、好きな部位を選んで食べるのです」
 北島がシュラスコの食べ方を伝授する。
「彼らは、必ず肉の名称を伝えますから、好きな部位を頷けばいいんです」
「いやぁ~、部位があり過ぎる。名称が分からない」
「私も当初はそうでした。徐々に覚えました。牛はゼブー種ですから、背にこぶがあって圧力釜で煮た物が美味しく、私は好きですね」

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