ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

忘れ水 幾星霜  第三章 Ⅷ

「うん、でもカーマで休みながら・・」
「え、なに? どこで休むの?」
「カーマとは、ベッドのことです」
 北島が直ぐに説明したので、また大笑い。
「ボクは、北島さんと打ち合わせが終わっていないから、ロビーに残ります。千香ちゃんのこと、宜しくお願いします」
 亜紀は千香を支えエレベーターに向かうが、輝明の顔を流し見る。胸に狂おしい思いが湧く。
《どうして、こう切ないの。輝君の考え方が間違っているって、どういうことなの。どうして、ふたりは私を庇うのよ》
 輝明と北島は一階のロビーへ行き、打ち合わせの続きを始める。輝明にすれば、亜紀との関係を中心に滞在する予定だが、やはり千香の容体も考慮しなければならない。
「北島さん! もし、千香の具合が悪くなったら、医師を紹介していただけますか?」
「はい、そのことは心配ありません。このホテルの近くに日本文化センターが有り、地階のサン・パウロ援護協会診療所の医師に対応を依頼してあります。それは、亜紀さんが勤める憩いの園の事務長が、手配されました」
「そうですか、渡航前に千香の子供達から、厳しく頼まれまして・・。安心しました。北島さん、感謝します」
「いいえ、私より亜紀さんが特に心配し、亜紀さんから事務長にお願いしたようです」
「分かりました。園を訪問できますよね。その時に、お礼を伝えます」
 話が一段落したところで、北島がカフェを注文した。
《本当は、紅茶が飲みたいなぁ。でも、ここはブラジルだ。我慢しよう》
 仲良く手を握ったまま、部屋に戻ったふたりはソファでくつろぐ。
「亜紀!」
「ん、なに?」
「私のルームは、こっちよ。輝坊ちゃんは居間の向こうのルーム。一緒になんか、寝ないわよ。安心して・・」
「そんなこと、当たり前じゃない。寝たければ、遠慮せずご自由にどうぞ」
《なにを向きになっているの。バカらしいわ》
 千香の笑いを堪えたお澄ましな顔に、笑いを誘われる。
「ふふふ・・。もう、千香ったら許さない。参ったわ。さあ、ベッドに横になってね」
「なに言ってんの。カーマでしょう?」
 千香が大真面目で言うものだから、再び笑ってしまった。千香は気を張り詰めていたのか、横になると大きく息を吐き疲労の顔を見せる。
「千香、大丈夫なの。心配だわ」
「うん、平気よ。少し笑い過ぎただけ・・」
 瞼を閉じた千香の顔。
《やつれた顔だけど、綺麗な顔立ちね。あなたの友達になれて幸せよ》

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