微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅧ
千代と御堂が別れの挨拶をした。
「若月さん、これであなたも平穏に暮らせるでしょう」
「はい、ありがとうございます」
若月は丁寧に礼を言った。
「それで、この若者たちの記憶を消しますが、宜しいですね?」
御堂が、私と福沢に念を押す。
「その件ですが、今後の活動を継続させるために、許される範囲で残せませんでしょうか?」
福沢准教授が、御堂に請願する。
「はい、わたくしの一存では、決め兼ねます。しばらく、お待ちを・・」
御堂が千代に近寄り、小声で話を交わす。千代が頷き、御堂が深々と礼をした。
「典侍様から、許可を得られました。ただ、決して口外しない。それに、福沢先生の指導で活動して下さい。もし、身勝手な行動をすれば、権助のように処罰されます」
御堂の言葉に、畠山や助手のメンバーが目を輝かす。
「それでは、今後も邪鬼などを探すことが、許されるのですね?」
畠山が、決意の面持ちで尋ねた。
「ええ、邪鬼だけでなく、他の怨霊も見えます。ですから、ややもすれば恐ろしい体験を、するかもしれません」
「そうだよ。見えることは、却って怖いと思う」
自分の経験から、若月が付け加える。二人の女子が、体を強張らせた。
「だから、常に私の指示を仰ぐことだ。あとで、研究室に集まり、協議しよう」
助手たちの心を読み、アドバイスする。
「はい、分かりました」
「御堂さん、了解しました」
横で聞いていた私は、千代に黙礼する。
「大河内さん、冥府とこの世の橋渡しを、私が承っております。例の道祖神が連絡場所となりますので、方法は後日にお伝えします」
目の前の観音像が、光り輝き出した。
「それでは、失礼します。目を閉じてください」