微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅤ
数え切れない邪鬼の大群。権助に新たな力が備わったようだ。私は恐れ、今回の戦いで権助を完全に潰さねばと思った。
庭園の池を過ぎる。ようやく、洞窟の入り口に辿り着いた。
「大河内さん、権助は内臓に目もくれず、真っ直ぐに向かってきましたよ」
「ええ、私も見ました。彼の執念を、改めて確認しましたね」
「うわぁ~」
「きゃあ~」
洞窟の中へ入る寸前に、助手の叫び声が上がる。
「どうした?」
後ろに振り返ると、徳明園の門を飛び越えて、侵入する権助の姿が見えた。権助だけが、人間の姿に戻れるようだ。その後ろに、邪鬼の群れ。
「急ごう。早く千代さんと会わなければ・・」
私たちは急いだ。
「番号は、13,21,34番の仏像だ」
奥行きが深く、観音菩薩像が並ぶ。
「走れ、早く見つけろ! 13,21,34だぁ~」
権助を見ると、洞窟の入り口で足が止まる。
「グァ~、グァ~・・」
雄叫びを上げた。洞窟の入り口を壊し始める。
「主任、見つけました。13番はこれです」
「よし、それにご朱印の札を張ってくれ・・」
奥から、助手の明菜が声を張り上げた。
「先生、21番です。これにご朱印を張れば、いいんですよね」
「そうだ。明菜君ありがとう」
残りの34番が見つからない。奥に幾つかの洞があった。
「あっ、これだ。ありました!」
ようやく探し当て、ご朱印を仏像に張り付ける。それぞれの仏像が輝き出した。
「お、お~、凄い。あ~、眩しい・・」
「私、こんなの初めてよ。あ~、綺麗な光ね」
驚く助手たちの前に、千代と御堂の姿が現れた。