ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅧ 

 私が若月を庇うように、ファミレスを出る。やはり、私たちを見張っていた邪鬼が、ゴソゴソと動き出した。
「相当数の邪鬼が、暗闇で動いている。若月、注意しろ!」
 私が、若月に小声で耳打ちする。
「はい、主任」
 私たちは雑木林の反対方向へ歩く。明るい商店街の中を、ゆっくり歩いた。その隙に、御堂が雑木林へ向かう。
「よし、上手く行きそうだ」
 三人が同時に後ろへ振り向いた。ヤツラには、商店街の明かりが眩しく、三人をまともに見られない。
「ウ~ッ、小賢しい人間どもめ・・」
 真っ赤な目と鋭い牙で、憎々しく見つめる。地面を長い爪で引っ掻く。
「いつ見ても、不細工な姿だ。風上にいるから、あの嫌な臭いを嗅がなくて助かる」
 若月が顔をしかめながら、呟いた。
「オノレ~、若いの。減らず口を叩きやがって、必ず食い殺すぞ~」
 権助が前に現れ、若月を睨む。
「な、なんだって! ちゃんちゃらおかしいや・・、フンだ」
 彼は一瞬怯むが、鼻であしらう。
「ガァ~ッ!」
 権助の指示で、数頭の邪鬼が襲いかかる。
「カンジザイボサツ ギョウジン ハンニャハラ ミッタジ・・」
 若月の般若心経に、邪鬼らが立ち止まり逃げ腰になった。
「おい、いつの間に読経が・・」
「あれから、必死に覚えましたから・・」
 私も一緒に唱える。邪鬼らは暗闇の中に逃げ込む。
「だが、油断は禁物だ。必ず隙を窺っているからな」
「御堂さんは、無事に行けたですかね?」
 福沢が心配する。

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