微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅤ
考え倦んだ末、結局駅前のコンビニする。私と若月は、周りに気を配った。特に車内の人の動きを確認し、一駅ごとに車両を変更。
約束の駅前には、福沢が先に来て待っていた。
「早かったですね・・」
「ええ、その女性に興味が湧き、急いで来てしまいました」
福沢は照れながら、早口で答える。
「主任、間違いなく現れますかね?」
若月が落ち着きなく、そわそわと辺りを見回す。その動作に、危険を感じて叱る。
「若月、余りキョロキョロと見るな・・。ヤツらがいたら、変に勘繰るぞ!」
雑木林の方から和服の女性が、こちらに歩いて来る。福沢と若月が、信じられない様子で女性を見つめた。
「お待ちになったかしら・・」
この世の者とは思えない、涼しい声が三人の耳にささめく。
「い、いえ・・、それほど、でもない・・、です」
私の声が上擦る。福沢も若月も緊張しているようだ。
「うふふ・・、何を緊張しているの? あら、この人が若月さんなの?」
自分の名前を呼ばれ、若月の体が益々強張る。
「こちらが、確か福沢先生でしょう?」
「えっ、どうして私を・・」
福沢は驚き、固まった。
「御堂さん、驚きましたよ。私たちを知っているなんて・・」
「詳しいことは、後ほど説明するわ。ここは危険よ」
「そうですね。そこのファミレスへ入りましょうか?」
私たちは、注意深く見回し、ファミレスへ移動する。中に入り、奥まった場所を選んだ。一対三の座り方では不審に思われるので、若月を横に座らせる。彼は満面笑顔で喜んで座った。
「早速ですが、あなたのことが知りたい。それに、本当は私たちのことを、ご存じなのでしょう?」
御堂は静かな面持ちで、私たち三人を思わせぶりに見る。その視線に絡むと、私の心髄が震えた。