ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅤ 

 考え倦んだ末、結局駅前のコンビニする。私と若月は、周りに気を配った。特に車内の人の動きを確認し、一駅ごとに車両を変更。
 約束の駅前には、福沢が先に来て待っていた。
「早かったですね・・」
「ええ、その女性に興味が湧き、急いで来てしまいました」
 福沢は照れながら、早口で答える。
「主任、間違いなく現れますかね?」
 若月が落ち着きなく、そわそわと辺りを見回す。その動作に、危険を感じて叱る。
「若月、余りキョロキョロと見るな・・。ヤツらがいたら、変に勘繰るぞ!」
 雑木林の方から和服の女性が、こちらに歩いて来る。福沢と若月が、信じられない様子で女性を見つめた。
「お待ちになったかしら・・」
 この世の者とは思えない、涼しい声が三人の耳にささめく。
「い、いえ・・、それほど、でもない・・、です」
 私の声が上擦る。福沢も若月も緊張しているようだ。
「うふふ・・、何を緊張しているの? あら、この人が若月さんなの?」
 自分の名前を呼ばれ、若月の体が益々強張る。
「こちらが、確か福沢先生でしょう?」
「えっ、どうして私を・・」
 福沢は驚き、固まった。
「御堂さん、驚きましたよ。私たちを知っているなんて・・」
「詳しいことは、後ほど説明するわ。ここは危険よ」
「そうですね。そこのファミレスへ入りましょうか?」
 私たちは、注意深く見回し、ファミレスへ移動する。中に入り、奥まった場所を選んだ。一対三の座り方では不審に思われるので、若月を横に座らせる。彼は満面笑顔で喜んで座った。
「早速ですが、あなたのことが知りたい。それに、本当は私たちのことを、ご存じなのでしょう?」
 御堂は静かな面持ちで、私たち三人を思わせぶりに見る。その視線に絡むと、私の心髄が震えた。

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