微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅶ
「でも、後で不味いと思い、直ぐに引き返したけど・・」
若月は浮かない顔をする。
「それで、どうしたんだ」
「ええ、女の子の姿は消えていた。ただ、座席がそのまま濡れていました」
妙にうさん臭い感じがする。
「何か、他に感じたことは無いか?」
彼は困惑しているようだ。
「ん~、どうなんだろう。よく分かんないですが、嫌な臭いがした」
「えっ、どんな臭いだった?」
「はい、邪鬼の臭いです。それも、権助と同じ生臭さでした」
どう考えたらよいのか、私は思案に暮れた。
「若月、どうも狙われているようだ」
「私が、ですか・・」
「あぁ、そうだ。中古の車や女の子は、若月をおびき寄せる罠だ」
目を丸くし、驚愕する。
「どうして、私を狙うんですか?」
「恐らく、前回のことで恨んでいる。奴らは執念深く、腹いせに君を殺すつもりだ」
殺すと言う言葉に、彼が怖じ気づく。
「そんな、主任を手伝っただけですよ。理不尽な話だ」
「とにかく、車を調べよう・・」
外にある車を、二人で隅々まで調べる。若月には区別できない、邪鬼の爪痕があった。
「主任、何も有りませんね」
「まあな・・」
邪鬼は必ず動き、若月を冥府の境界線へ呼び込むだろう。
「大河内主任・・。もし、邪鬼が私を殺すつもりなら、どんな方法ですかね」
彼らは、バラバラに引き裂き、食い殺すしかない。私が伝えると、真っ青な顔をして震えあがる。