微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅵ
日曜日の朝、早くに目覚め、落ち着かない。今度は、どんな問題が待ち受けているのか、それに誰と出会うのか楽しみだった。
ただ、以前の出会いは、美しい女性だった。ところが、あのラジオから聞こえたのは、子供の声である。そのことが、特に私の興味をそそった。
若月を待つ間、心をときめかせ頭をフル回転させる。
《待てよ、今回はオレではなく、若月が主だな。車の購入経緯からしても、彼に係わることだ。用心させよう》
来るのが遅く、私は待ちわびていた。
「わ~、遅くなって申し訳ないです。主任、おはようございます」
慌ただしく、やって来た。私は挨拶を無視する。
「おい、もう昼時だぞ。遅すぎる」
若月は玄関先で、かしこまり動けない。
「まあ、いいや。早く上がれよ」
「アッ、ハイッ・・」
恐る恐る靴を脱ぎ、部屋に上がる。私が用意した紅茶を飲み、漸く落ち着いたようだ。
「それで・・、実は・・」
若月が、迷いながら話す素振り。
「なんだよ、早く喋れよ」
「実は、昨晩遅く・・、妙な気配がしたので・・、車を覗いたんです」
彼の話では、車の後部座席に女の子が座っていた。ボロボロの衣服で濡れ鼠状態。顔色から血の気が失せ、ガタガタと震えている。紫色の唇からか細い声で、彼の名前を呼んだという。
「私は怖くなって、その場から逃げ出した」
未だに、彼の瞳は揺れ動いている。
《やはり、若月だったか。これは慎重に考えねば・・》