ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅲ

 しばらく何も起きなかった私は、がぜん興味が湧く。昼食が終わり、社に戻る。
「若月、帰りに家まで送ってくれるか?」
「いいですよ。帰りに呼んでください」
 実際の状況を、私は確かめたいと思った。仕事が捗り、定刻で退社する。若月も支度して、私を待っていた。
 ビルを出ると、雨は止んでいなかった。仕方なく駐車場まで走る。彼の車は、駐車専用ビルの五階に停めてあった。
「なんだ、車を替えたのか?」
「はい、中古ですが、このタイプが好きなんです」
 車は、ワゴンタイプの大型車。乗って中を見渡す。私の胸がざわつく。
「なんだか、胸騒ぎを感じる」
「えっ、本当ですか?」
「ああ、感じるよ・・」
 若月がラジオをオンする。普通に音楽が流れた。
「別に壊れていないでしょう?」
「確かに、問題無いね」
 彼がエンジンを掛け、駐車場を出る。私はラジオをオフにした。都内の混雑を避け、首都高速を使う。
「それで、その時のことを、詳しく聞きたいんだが・・」
 若月は車を運転しながら、説明する。
「寝過ごし雨も降っていたから、買い替えたばかりの車で出勤したくなって・・」
 首都高速も込み始め、彼は運転に集中する。
「焦らなくていいから、慎重に頼むよ」
「ええ、分かっていますよ」
 彼は目線を前に向け、話を続けた。
「家を出ると直ぐに高架橋があって、その下を潜った瞬間、ラジオから雑音が流れたんです。スイッチを見ると、オフになっていた。変だなぁ、と思いましたよ」

×

非ログインユーザーとして返信する