微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅲ
しばらく何も起きなかった私は、がぜん興味が湧く。昼食が終わり、社に戻る。
「若月、帰りに家まで送ってくれるか?」
「いいですよ。帰りに呼んでください」
実際の状況を、私は確かめたいと思った。仕事が捗り、定刻で退社する。若月も支度して、私を待っていた。
ビルを出ると、雨は止んでいなかった。仕方なく駐車場まで走る。彼の車は、駐車専用ビルの五階に停めてあった。
「なんだ、車を替えたのか?」
「はい、中古ですが、このタイプが好きなんです」
車は、ワゴンタイプの大型車。乗って中を見渡す。私の胸がざわつく。
「なんだか、胸騒ぎを感じる」
「えっ、本当ですか?」
「ああ、感じるよ・・」
若月がラジオをオンする。普通に音楽が流れた。
「別に壊れていないでしょう?」
「確かに、問題無いね」
彼がエンジンを掛け、駐車場を出る。私はラジオをオフにした。都内の混雑を避け、首都高速を使う。
「それで、その時のことを、詳しく聞きたいんだが・・」
若月は車を運転しながら、説明する。
「寝過ごし雨も降っていたから、買い替えたばかりの車で出勤したくなって・・」
首都高速も込み始め、彼は運転に集中する。
「焦らなくていいから、慎重に頼むよ」
「ええ、分かっていますよ」
彼は目線を前に向け、話を続けた。
「家を出ると直ぐに高架橋があって、その下を潜った瞬間、ラジオから雑音が流れたんです。スイッチを見ると、オフになっていた。変だなぁ、と思いましたよ」