ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅧⅩⅦ 

 彼女の感情は、激しく変化する。言葉を選ばなくてはと思った。ただ、恣意なことは避けたい。
「う~ん、上辺だけの女性らしさでなく。なんと言えばいいのかな。麗しい? 簡単に言えば、仕草や姿が大人の女性として、たおやかな色っぽさかな?」
 千恵は、直ぐに解釈したようだ。あっ、やっぱり。あの目つきは、小悪魔の目だ。勘違いしている。
「な~んだ。そうか、金ちゃんが喜ぶ体形になり、もっと女っぽくなればいいのね」
「ち、違うよ。淑やかな女性だよ。色気は自然に醸し出される上品な女性だ」
 瞬時に目付きが、悪魔の権化に変わった。
「じゃ、私は下品なの? はしたない女だと思っているのね?」
「そ、そ、そうじゃないよ。千恵ちゃんは、素敵な女の子だよ。俺が悪かった、ごめん、誤るよ」
 俺は手を合わせ、低姿勢になる。
「素敵な女の子から素晴らしい女性になると、勝手に想像した。そんな千恵ちゃんを、将来の妻として愛したかった」
「・・・」
「偽りでなく、本当の恋を君としたいんだ。そして、恋から脱却して、永遠の愛に結び付けたい。それが、俺の本心だよ」
 俺は必死に言い訳をする。惨めだが、千恵を失いたくなかった。
「お願いだ。信じて欲しい・・」
 平手でパッチンと頭を叩かれた。
「えっ、なんで?」
 俺は驚き、姿勢を戻す。
 目の前に、涙でぐしゃぐしゃの千恵が、俺を睨んでいた。愛しさに胸が疼く。俺の心は完全に恋の虜と化し、体が熱中症同然の暑さに。
「金ちゃんのバカ・・。分かった、分かったから・・。私を抱いて」
 俺は言葉を返さず、そのまま千恵を抱きしめる。千恵の唇を久しぶりに味わう。
「千恵ちゃん・・、悪かったね」
 唇を離し、俺は詫びた。彼女は俺の言葉を、唇で塞ぐ。長いキスが続く。

×

非ログインユーザーとして返信する