ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅧⅩⅥ 

「うん、そうしよう。じゃ、しばらくは、お別れだ」
「えっ、本当に会えないの?」
 ベンチから立ち上がり、俺を見下ろす。俺は座ったまま、見上げて頷く。
「どれほど、苦しめるつもりなの? これ以上苦しめるなら、私、死んじゃうから」
 仕方なく、俺は立ち上がる。そして、抱きしめた。
「千恵ちゃん、永遠に別れることじゃないよ。しばらくの間だ・・」
「しばらくって、一週間、二週間?」
「いや、もっとかな」
 俺の腕を振り払い、二三歩退く。
「本当は、私のこと嫌いなんでしょう? だから、会いたくないんだ・・」
 涙を浮かべ、恨めしそうに俺を見る。
「違うよ。嫌いじゃないって! 好き嫌いで、会わないんじゃないよ」
 感情が高ぶり、肩で息をする千恵。
「千恵ちゃん、落ち着いて・・。俺の言い方が悪かった。別れじゃない。互いを冷静に考える期間だ」
「嫌よ。この数日、会えなくて寂しかったもん・・」
「だから、俺は携帯の待ち受け画面に、千恵ちゃんの姿を使うよ。それに、寂しい時は電話で話せばいいだろう」
「あっ、そうか。会えなくても、話せるんだよね」
 機嫌が直ったようだ。
「千恵ちゃん、数か月後に、夢が実現となる大事な時期なんだ。だから、俺は勉強に集中する必要がある」
「そうよね、金ちゃんは学校の生徒。勉強が大切よね。私って、自分だけのことしか、考えていなかったわ」
 彼女はハンケチを取り出し、自分の涙を拭う。そして、笑顔を見せた。
「それでね、頼みがあるんだ」
「頼みって、何を?」
 俺は千恵が可愛くて好きだが、少し若すぎる。魅惑的な大人の女性と、熱烈な恋がしたい。さて、彼女は納得するかな・・。
「うん、君が艶やかな女性になることを、望んでいる」
「え~、艶やかな女性? 意味が分かんない」

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