ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅧⅩⅡ 

 もう、隠す必要はないと判断し、千恵にあの人のことを話す。
「その人は、素敵な人?」
「うん、素敵な人だった」
 千恵の瞳が揺らいでいる。懸命に想像しているようだ。
「私と比べたら・・」
「比べることじゃないよ。人それぞれに個性がある。素敵の意味も異なるからね」
「ふ~ん。でも、金ちゃんが素敵に思った理由を教えて?」
 あの人の素敵な理由? 言葉に表せない。心の感覚かな?
「ねえ、隠すこと無いじゃない。早く教えてよ・・」
「うん、感覚だろうな。会えば胸がときめき、離れれば胸が引き裂かれる。目を合わせれば、その瞳に心が奪われた・・」
 この感情は、今でも変わらない。俺の青春に掛け替えのない人だった。
「それで・・、彼女とキッスしたの・・?」
 千恵のか細く震える声。彼女のいじらしい心根に、俺の心情が感応した。千恵の肩を抱く。
「いいや、手さえ触れることも叶わなかった」
「え~、なんで? 私には簡単に触れ、何度もキッスする癖に・・」
 そう、勇気がなかった。嫌われることを、意識したからであろう。
「そうだね、不思議だね」
 やはり、あの人とのスタート・ラインがずれ、俺が先行し過ぎた結果だろう。
「もうひとつ教えて? 美人? 髪型は? 色白?」
「おいおい、ひとつじゃないのか? ハハ・・」
 俺は笑いながら、彼女の肩を揺する。
「ふふ・・。だって、気になるんだもん」
「そうか、美人だ。ロング・ヘアーで色白だった。雰囲気が優しい大人の女性かな」
「わ~、それじゃ、敵わない。よし、私はそれ以上になるからね。決めたからね」
 やっぱり、千恵は素敵な小悪魔だ。
「必要ないよ。千恵ちゃんは、可愛いよ。大好きだから・・」
「嘘よ。まだ、あの人に未練が有るんでしょう?」
 無いと言えば、嘘になる。でも、俺の心は千恵に満たされている。
「もう、俺の心を独占しているのは、憎たらしい小悪魔で俺を魅了する天使だよ」

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