ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅦⅩⅧ 

 翌々日の夕食後、千恵から連絡が来た。
「金ちゃん、元気!」
 すごく元気な声が、携帯から響く。
「ああ、元気だよ。もう少し、声を低く・・」
 幸いに、談話室には誰もいなかった。ただ、誰かに聞こえたら、大変だ。
「分かった・・。それからね、もう仕事しているからね」
「そうか、良かった。それで、今日は?」
「・・・」
 ほんの間、会話が途切れた。何かを話したいようだ。
「どうしたの? 言いたいことが、あるんだろう?」
「うん、次は、いつ、会えるのかなぁ。今じゃ、ダメかな・・」
 千恵は心細そうに、尋ねる。俺の胸が疼く。
「いいよ。俺も聞きたいことがあるんだ」
「えっ! 本当に、今なの? 会えるのね? 嘘じゃないよね?」
 彼女の反応が想像できた。恐らく目を丸くし、指先で鼻を弾いているだろう。
「嘘じゃないよ、千恵ちゃん」
「分かったわ。今から行くからね・・」
 携帯が切れる。俺も急いで寮を出た。近くの小さな公園で待っていると、走って来る千恵の姿が見えた。ひぐらしがカナカナと鳴く。もう夏も終わりだ。
「金ちゃん・・」
 近くに寄ると、一歩手前で止まる。俺を見つめたまま、言葉が出ない。瞳から紅涙が零れる。いじらしい姿に、俺の心が張り裂ける。
「千恵ちゃん、お出で・・」
 手を差し出すと、千恵が胸に飛び込んで来た。俺は優しく抱える。
「金ちゃん、やっと会えた・・」
 横のベンチに座らせる。俺の腕にしがみつき、体を寄せた。千恵の愛しさに、俺の感情が震える。
「俺も会いたかった」
 腕にしがみついたまま、俺の顔を覗き視線を合わせた。俺は決心する。
「千恵ちゃん、大事な話があるんだ」
 彼女は視線を放さず、小さく頷いた。

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