偽りの恋 ⅦⅩⅤ
彼女なら理解すると思い、洗いざらい話すことにした。
「佐藤さん・・、今回のこと全て話すよ。ハッキリ言って、悩んでいるんだ」
「ええ、千恵ちゃんからも告白されたわ。あなたに抱かれ、キッスもしたそうね」
やはりな、あの子らしい。
「そのことで、どう思った?」
「う~ん、いろいろ考え、妬みも感じたわ」
佐藤の表情に、話すことを躊躇い決心が揺らぐ。
「そうだろうな~。ん~、困った」
「困ること無いわ。二人の間に、割り込む気持ちなんて・・、無いもの」
「・・・」
俺は話すのを止めようか迷う。
「いいのよ、金ちゃん。私のこと気にしないで。あなたは、単なる通り雨よ。ずぶ濡れになったら、生きて行けなくなる。だって、最初から恋なんて無かったもの」
確かに恋じゃない。二人の仲は、気紛れの線香花火のような間柄だ。だけど、切ない花火だった。
「佐藤さんとは、不思議な縁だった。決して嫌いじゃ無い。俺の心に刻まれ、消えない存在だよ」
「うん、ありがとう。やっぱり、金ちゃんだ。たとえ束の間でも、心を許せる人だと思ったわ」
佐藤は俺の手を固く掴み、本心を伝える。だが、直ぐに手を放した。
「いずれ、この寮を出る。もう、数か月後だよ。そして、この町には戻らず、外国へ行く。そのこと、千恵ちゃんは理解しているのかなぁ?」
「あの子は賢いもの。私が説明したら、理解していたわ」
「理解しても、現実は簡単じゃない。それに、彼女は十八だよ。若すぎる。優しい祖母ちゃんを残して、行けるはずがない。それに、それに・・」
なんで、こんなに否定ばかり言って、俺はどうかしている。
「落ち着いてよ。まだ、数か月もあるわ。感情抜きで、冷静に話し合ったら、どうなの?」
「でもね、俺は過去の思いを消したばかりだ。あの人を裏切り、長谷川さんとの約束を破ることになる」
俺は恋を封印し、未来の夢を追いかける。そう決心したんだ。