ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅦⅩⅣ 

 それからの数日は、何故か苛立ち落ち着かない。千恵から音沙汰が無く、俺の脳は完全に支配された。残暑と千恵の思いが、俺を焼き焦がす。
 ほぼ一週間後、佐藤から呼び出される。
「今晩は、まだ暑いわね。元気だった?」
「うん、まあね。ところで、今日はなんの話かな?」
 昼間より幾分暑さが和らぐも、未だに蒸し暑く気分が優れない。団扇でバタバタとあおぎ続ける。
「千恵ちゃんから、事細かく聞いたわ。時折、べそをかきながらね」
 俺の心臓が凍り、言葉を失う。本当に事細かく喋ったのか、信じられない。
「・・・」
「あら、表情が変わった。疾しいと思っているのね」
「・・・」
 疾しいと言われ、俺の脳が目茶目茶に崩壊。
「でも、安心して。私も千恵ちゃんも、金ちゃんを嫌っていない」
「ふぅ~」
 俺は大きく息を吐いた。
「ふふ・・、でも、二人に嫉妬を覚えたわ」
 俯く佐藤が、上目で俺を見る。その視線は愁いを帯びていた。
「俺の心が幾度も壊れかけ、寸前のところで耐えた。だけどね、千恵ちゃんのピュアな気持ちが、俺の決意を弱めている」
「そうね。私も感じた。あの子だったら、金ちゃんの心を掴んで離さないと思う」
 やはりな。彼女も感じているんだ。
「確かに、そうだ。俺にとって、初めて経験するタイプの女の子だよ」
「金ちゃんに、お似合いの子よ。どんなに辛くても、あなたに従うわ」
 それが、困るんだ。俺は常に自由な行動を独りでやってきた。
「いいや、俺は振り回されるはずだ」
「金ちゃん! あの子を信じなさい。今は、金ちゃんに夢中なの。だから、煩わしく思うでしょうね。でも、あなたの心をしっかり捕らえたら、純情可憐な子に戻るわ」
 純情? 可憐? うん、確かに素材はある。容姿も完全だ。
「うふふ・・、ハハハ・・、確かにね。千恵ちゃんは完璧だ」
「なんだか、嫌らしい笑いね。フフ・・」

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