ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅦⅩⅡ 

 俺は理解に苦しむ。
「金ちゃんらしい、言い回しね。うふふ・・」
「家に帰ったら、突然に電話だよ。意味が分からず、駅まで迎えに入ったけど・・」
 佐藤の説明によると、数日前に千恵から相談を受ける。祖母からお盆に帰るよう勧められ、帰りたくないと悩んでいた。
「千恵ちゃん・・。お祖母ちゃんのことは、とても心配してた。でも、帰る勇気がなかったの。故郷に、嫌な経験があってね」
「え、嫌な経験?」
「そう、あの村の不良グループから、仲間になれと追い回されたらしいわ」
「・・・」
 俺は耳を塞ぎたくなった。身の危険を感じた祖母が、高校卒業と同時にあの村から遠ざけたという。
「だから、金ちゃんを誘って行きなさいと、アドバイスしたのよ」
「そうか、理解したよ。でも、前もって連絡をくれればいいのに・・」
「あら、千恵ちゃんはしなかったの?」
 俺は、ため息をつき憮然と答える。
「ああ、突然さ。今、高崎駅にいるからって、言われたよ」
「あの子らしいわ。恥ずかしかったのよ。だって、金ちゃんが大好きだから・・」
 俺は答える言葉を失う。今回のことで、十分に体験したから分かる。と言って、佐藤さんに説明できる訳がない。
「うふふ・・、満更でもない顔ね。金ちゃんは、直ぐに分かる」
「そ、そんなことない」
 俺は慌てた。佐藤が俺の瞳を探る。
「いいのよ。表情で分かったから・・。金ちゃんなら安心よ」
「それは困る。佐藤さんだって、俺の気持ちを知っているだろう?」
「もちろん、理解しているわ。でもね、人の気持ちは、前に進めば変わるものよ。そうでしょう?」
 俺は曖昧に頷くしか、考えられなかった。
「もう、今日は遅いから、俺は帰るね。千恵ちゃんに宜しく・・」
「ええ、分かったわ。なにかあったら、連絡させるね。おやすみなさい」
 寮に戻った俺は、自分のベッドに横たわる。この二日間の行動を思い起こした。

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