ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅦⅩⅠ 

 彼女は、鷹揚に構え、唇を差し出す。
「ムードの無いキッスなんて、なんか変だよ」
「これで、いいの。外国なら、日常茶飯事でしょう」
「あ~、それは挨拶のキッスだ。ハグと同じさ・・。ムム・・」
 千恵の唇が、強引に俺の口を塞いだ。俺の脳が、簡単に受け入れる。既に挨拶のキッスではなく、恋のキッスに変わりつつある。
「ん?」
 駅前のロータリに、一台のタクシーが入って来た。
「ま、待って・・。タクシーが来た」
 千恵の体を引き離す。
「もう、またなの? どうして、肝心な時に邪魔が入るの。頭に来ちゃうわ」
 不満の声を上げ、タクシーを睨みつける。
「仕方ないだろう。でもさ、タクシーで帰れるから、良かったじゃないか」
 彼女を無視して、タクシーに手を挙げ合図した。後ろの座席に並んで座るが、千恵は半身になって、無言で外を眺め続ける。喋ることなく、女子寮の前に着いた。
「さあ、着いたよ」
 タクシーから降り、彼女の荷物を渡す。
「じゃ、またね」
 たった一言。別れも感謝も無い。後ろを振り返らず、寮の中へ消えた。
「なんだよ、あの態度。本当に憎たらしい小悪魔だ」
 俺はほんの僅か眺めたが、玄関ホールに人影が見えたので立ち去る。
「金ちゃん! ちょっと待ってよ」
 背後から呼び止められた。俺は嫌な予感を覚え、静かに振り向く。予感が当たった。
「お疲れ様。我が儘な子だから、大変だったでしょう?」
 やはり、佐藤さんだった。
「えっ、なんで、どうして、知っているんだい?」
 俺の顔が真っ青、頭の中は真っ白になった。
「うふふ・・、もちろん知っているわ。だって、私が行かせたのよ」
「え~、驚き、桃の木、山椒の木。ど、どうしてさ?」
 

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