ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅦⅩ 

 俺は答えることができない。口をパクパクと動かし、肺に酸素を送り込む。過呼吸に陥りそうだ。俺は天を仰ぐ。
「金ちゃん、大丈夫なの?」
 千恵が俺の顔を覗き、小さな手で頬を擦る。なんて、優しく滑らかな手の感触、俺の脳が宙を回る。
「これが・・、天国へ誘う・・、天使の手・・、なのか?」
 我知らず、余計なことを呟いた。
「うふふ・・、天国? ふふ・・、私の手が? もう、胸がキュ~ンとなっちゃう」
 横座りのまま、千恵が頬を摺り寄せる。
「アッ! 痛い。金ちゃん、痛いよ」
 俺の脳が、一気に墜落。
「な、何? どうした?」
 意味が分からず、ベンチの背もたれから体を起こす。
「金ちゃんの無精ひげ、ちゃんと手入れをしてよ!」
 小さな天使の手が、俺の頬をペタペタと叩く。
「あっ、はぁ。そうか、髭か? ハハハ・・、とんだ、天使の悲劇だ。アハハ・・」
「何が、天使の悲劇よ!」
 バッシと叩かれた。
「オッ、イッテェ~な。なんだよ、千恵ちゃん?」
 一瞬の出来事に、俺は驚く。
「無精ひげなんて、大っ嫌いよ。金ちゃんの大バカ!」
 千恵の目から大粒の涙が、溢れ出す。俺の最大の弱点は、紅涙だ。
「ごめん、悪かった、頼むから泣くなよ。だから、恋するに値しない男なんだよ、俺は」
 不思議にも、千恵の涙が瞬時に止まった。
「ん、恋するに値しない男? 誰が、値しないの? 妙なこと言わないでよ、狡いんだから。金ちゃんが、そう思っても、私は絶対に思わない。絶対よ!」
 勝気な顔に健気な言葉が、俺の心根を飲み込む。決意がグラグラと揺れ動く。俺は千恵を抱きしめる。
「分かったよ、千恵ちゃん」
「じゃ、今日最後のキッスをして・・」
「あ~、やっぱりな。憎たらしい天使だ」

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