ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅥⅩ 

 新潟弥彦の旅は、千恵のことを思い恋人らしく振る舞う。祖母の家や弥彦神社参拝は、楽しい思い出となった。
「あの子は不憫な孫なんよ、だから頼みますね」
 千恵の祖母が、彼女の生い立ちを打ち明ける。幼き時期に母が病死、父が再婚すると疎まれる存在となった。母の実家に預けられ、高校卒業と同時に神奈川へ就職する。
「あ~、はい。こちらこそ・・」
 咄嗟のことで、俺は曖昧に答えてしまった。
「うふふ・・、こちらこそって、本当にいいのね」
 俺の返答を耳にした千恵が、茶化しほくそ笑む。
「いや、いや、アハハ・・」
 俺は笑って誤魔化す。
「もう、金ちゃんは・・」
 彼女は、俺の二の腕を力一杯抓った。
「ア~ッ、痛いなぁ。参った、参ったよ」
 仲の良い二人の様子に、祖母が嬉しそうに喜んだ。昼食を祖母の家で済ませ、日本海の海岸へ行く。
 岩場に並んで腰掛け、陽に輝く海を眺めた。盆過ぎの日本海は波が荒い。時折、飛沫が高く舞い上がる。千恵が俺の腕に寄り添い、肩に頭を乗せた。
「金ちゃん・・、ありがとうね」
 ポツリと呟く。
「ん? どうして?」
「だって、お祖母ちゃんが、あんなに喜んでいたから・・」
「ああ、そうだね。優しいお祖母ちゃんだ。羨ましいよ」
 たわいない話で時間を過ごす。
「金ちゃん・・」
 不意に肩から頭をもたげ、俺の心を読むように見詰める。
「なんだい?」
「金ちゃんのお嫁さんに、なりたいなぁ」
 俺は驚き、千恵の瞳に目を合わせてしまった。

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