ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅤⅩⅧ  

 千恵が首に腕を回し、激しく体を寄せる。決壊した二人の煩悩は、危険な状態になった。俺の手が、彼女の体を弄ぶ。千恵が切ない声を出した。
 その時、事務所の電話が大きく鳴った。その音に、俺の体が敏感に危険を察し、千恵の体を引き離す。
「千恵ちゃん、ごめん・・」
「あ~、なんで? こんな時に、電話が・・」
 興奮を抑え切れず、恨みがましげに俺の顔を見る。俺の心は疾しさに、安堵した。
「電話に出ないと困るから、ちょっと待ってね」
 急ぎその場から離れる。動悸が治まらず、一呼吸を置いて電話に出た。相手と話しながらも、千恵の残り香が鼻を突く。
 要件が済むと、部屋に戻った。千恵がベッドに腰掛け、両手で顔を覆っている。
「さあ、出掛けよう」
 彼女に近寄らず、冷静を装い俺は伝える。千恵が顔を上げ、鋭い眼差しで見詰めた。落ち着かせるために、冷蔵庫からサイダーを取り出し手渡す。
「あぁ、いいチャンスだったのに、残念ね」
 冷たいサイダーに、熱くなった彼女の煩悩が落ち着きを取り戻す。
「自分でも驚いたよ。参ったなぁ~」
 妄想は欲望を発火させる。千恵の着替える姿に、一瞬妄想を浮かべた。その結果、俺の欲望が暴徒化となった。
「困ること無いでしょう。嬉しかったくせに・・」
 確かに、心がときめいた。しかし、俺は約束を破り、後悔している。
「ああ、そうだね。でも、千恵ちゃんの唇を盗んじゃった。いけないことだ・・」
「そうよ。窃盗罪で警察に訴えちゃうかな?」
 美しく艶めかしい流し目で俺を見詰める。
「支度ができたら、出掛けるよ」
 このままでは、収まりがつかない。早く逃げ出すことにした。
「よし、これで金ちゃんの心を掴んだわ。佐藤さんと同等に話せるもん」
「えっ、なんてことを・・」
 俺は、彼女の言葉に困り果てた。

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