ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅤⅩⅡ 

 ファミレスから五分程度だ。工場の門を開け、車を入れる。
「へ~、ここなの? 印刷会社なのね」
「さあ、降りて。事務所を開けるからね」
 事務所を開け、電気を点ける。千恵は珍しそうに中を見渡す。
「金ちゃんは、どこで寝ているの?」
 事務所の奥を覗く。
「ああ、その横の部屋だよ」
 千恵が俺の部屋を開けようとする。
「ダメだ、中は散らかっているから・・」
 止めるのを聞かず、ドアを開けてしまった。
「・・・」
 部屋の中をジッと見詰めたまま、動かない。仕方なく、ドアを閉めようとした。
「ねえ、金ちゃん・・」
 目の前で振り向いた。近過ぎる千恵の顔。俺の心臓がバクバクと騒ぐ。
「・・・」
 彼女の眼差しに、俺の側頭葉が停止し言葉が出ない。
「ねえ、今晩はここに泊まり、明日の朝早く出掛けない?」
 俺の胸を小突く。胸の刺激によって、側頭葉が動き出した。
「いや、それは不味い。誰かが来るかも・・」
 不意に俺の胸に飛び込んで来た。
「千恵ちゃん、俺は・・」
 抱きしめたい気持ちが湧き上がる。だが、側頭葉の記憶が甦り、あの人や長谷川の顔が浮かび上がった。それに、佐藤の声が耳にささめく。
「金ちゃん、お願いよ」
 胸に唇を寄せて呟く。それは俺の体に官能的な響きとなった。
「千恵ちゃん、俺は苦しいよ」
「どうして?」
 頭をもたげ、可愛い唇が目の前で動く。前頭葉の組織がぐらぐらと揺らいだ。
 

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