ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅢⅩⅦ 

 突然に渡されたので、慌て狼狽える。
「えっ、俺に?」
「うふふ・・、そうよ。だって、独りで可哀そうだから・・」
「そうか、慰めのチョコなんだ」
「いいえ、告白のチョコよ。ねぇ~、秋ちゃん」
 首を傾げ、誘惑する仕草を見せる。俺の心臓が飛び跳ねた。
「ワォ、本当に、信じられない?」
「ふふ・・、ハハ・・、信じたの?」
 二人して、笑い出す。俺は呆気にとられ、声も出ない。
「なんだよ、千恵ちゃん。二人して、からかうなよ」
 驚いたことに、俺は一瞬本気になっていた。
「あ~、顔が真っ赤よ。千恵ちゃんに惚れたんだ」
「なにを騒いでいるんだよ」
 俺たちの様子に、竹沢が近寄って来た。
「いや、なんでもないよ。独りの俺を慰めているだけだ」
 面白くなさそうに、俺の顔をしげしげと眺める。
「あっ、疑っている目付きだ・・」
 すると、千恵が予想外な言葉を言った。
「だって、本当に好きなんだもの」
「わ~、千恵ちゃん。凄い!」
 木村が、トイレ休憩の終わりを告げた。再び、バスに乗り込む。
「いや~、参ったね。竹沢さん、冗談だよ、気にしないで・・」
 竹沢は、不機嫌な顔でバスに乗る。横に座る千恵が、小さな声で慰めた。
「どうした?」
 運転席の海田が尋ねた。
「いや、冗談に告白するから、驚いた・・」
「誰が告白?」
「竹沢さんの隣に座った女の子ですよ。だから、竹沢さんが拗ねちゃった」
 海田が大笑いした。後ろの席が、ビックリしてシーンと静かになる。

×

非ログインユーザーとして返信する