ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅢⅩⅤ 

「抽選番号は?」
 彼女は折ってある紙片を、広げた。なんと、偶然にも俺と同じだった。内心喜んだが、佐藤から釘を刺されていた。
「心変わりしたら、許さないわよ・・」
 その言葉が思い出され、背筋に寒さを感じた。
「金ちゃんは?」
「いや、今は喋っちゃダメなんだ」
 俺は誤魔化した。彼女は、恨めしそうに俺を見つめる。
「大丈夫だよ。心配しないで、楽しんでね」
「うん、分かった。また後でね」
 可愛らしい仕草で右手を軽く振った。
「金ちゃん、ちょっといいかな」
 広島出身の竹沢が俺を読んだ。
「何? 竹沢さん・・」
「今、あの子と親しく話していただろう?」
「ああ、それが、どうしたんですか?」
 竹沢は、こっそりと彼女の姿を追う。
「あの子と同じ番号だろう。俺に譲ってくれないかな」
「えっ、どうして知っているの?」
 竹沢は彼女を見た瞬間、一緒に座りたいと思ったらしい。悪い性格じゃないと考えていたから、素早く交換をした。
「まあ、しょうがないか。でも、初心な子だから、ほどほどにしてよ」
「分かっているよ。もちろん、気遣うさ・・」
 木村が、番号札を読み上げ、相手を確認させた。
 千恵の視線が俺に向けられた。俺は、首を横に振った。彼女が、がっかりした様子を見せる。
「ごめんな・・」
 俺の心臓が疼き、呟いてしまった。
「さあ、決まったらバスに乗ってくれ」
 木村が大きな声で呼びかけた。ところが、竹沢と交換した番号の女の子が、急きょ欠席と知る。
「木村さん、俺は独りかい?」
「やあ、金ちゃん。すまんな・・」

×

非ログインユーザーとして返信する