ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅢⅩⅣ 

 バスの工具箱からスパナを出し、ひもで結びつける。
「どうだ、これで十分にギアを動かせる」
 仕方なく、寮へ戻ることにした。当直の先生に頼み、実習室を開けてもらう。
「溶接は誰が一番上手いんだ?」
 海田が聞く。坂本が手を上げた。
「まかしといて、めちゃ上手く仕上げるさかい・・」
 確かに、坂本の腕は間違いなかった。あっという間に仕上げた。
「どやねん・・」
「ほんまに、凄いやん」
 その手際に俺は驚き、彼の脇腹を小突いた。
「ひぃや~、こしょばいこと、せ~へんや。金ちゃん!」
 その場の皆が大笑い。
「ところで、この状態では、三浦半島は無理でしょう」
 幹事の木村が危惧する。
「そうだな、近い場所に変更するか・・」
 結局、話し合いの結果、真鶴岬に変更となった。木村が相手の女子寮へ連絡する。
 翌日の日曜日、朝六時に集合。副幹事の木村が、抽選の紙を配る。
「相手の番号と一致したら、座席を決める。いいね!」
 三日前の晩、佐藤が旅行のメンバーを教えてくれた。
「千恵ちゃんと言う可愛い子が行くわ。あの子が、心配していたの。誰なら、安心かってね」
「別に誰でも、問題無いよ。悪いヤツはいないから・・」
「もし、何か嫌ことが有ったら、金ちゃんに話しなさいって言ったわ」
「えっ、俺に? なんでさ?」
「うふふ・・、だって、私の彼氏だからよ」
「あっはは・・、そんなこと、喋ったんか」
「ダメだったかしら?」
 佐藤の言う可愛い子って、どの子だろう。
「金ちゃん・・」
 後ろから、怖々と声を掛けられる。振り向くと、幼顔の女の子が立っていた。
「ああ、俺だけど・・」
「あのう・・」
「そうか、君が千恵ちゃんか?」
 パッと顔が赤くなり、小さく頷く。俺の心がときめく。

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