ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅩⅢ

 階段を下り、一階の普通席を見た。奥の席に目が流れる。楽しい時間を過ごしたはずの場所。
「どうしたの、金ちゃん?」
 佐藤の声に、あの時間が幻のように消え去った。
「いいや、なんでもない・・」
 外へ出ると、日差しが眩しく照らす。
「これから、どこへ行くの?」
「うん、例の議事堂前公園に行くよ」
 俺の好きな場所だ。彼女との思い出も無い場所。気楽に過ごせると思う。
「私、まだ頭がボーっとしている。凄い経験をしちゃった」
「いや、俺もだよ」
「まあ、金ちゃんの嘘つき!」
「本当さ、俺は初心だよ。正真正銘の初心な男さ・・」
「うふふ・・、信用しませんよ」
 二人は地下鉄に乗り、議事堂前公園駅に降りる。公園内は、誰もいない。
「本当だ、驚いたわ。こんな所に、公園があるんだ。それも素敵ね」
「うん、だから、俺の好きな場所なんだ」
 歩きながら、俺の表情を窺う佐藤。
「金ちゃん!」
「なんだよ?」
「誰と来たの? 思い出の場所なの?」
 俺は佐藤の顔を見た。
「いや、なんの思い出も無い場所。いつも独りで来ていた」
「ふ~ん、金ちゃんに、そんな場所があるんだ」
「ああ、そうだよ。誰にも邪魔されず、自分を見詰める場所かな?」
 俺は、小さな池の前に座る。佐藤も並んで座った。
「じゃ、私が・・」
 彼女がか細い声で、囁く。
「え、聞こえない。なんて言ったの?」
「私が初めてなの?」
 佐藤が真剣な眼差しを向ける。
「うん、そうなるね」

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