ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 Ⅹ 

 駅構内を歩き回った後、新宿駅西口に出る。あてもなく歩く。
「金ちゃん、どこかでお昼を食べようよ」
「そうだね。何が食べたい?」
 前に、花園近くのピット・インにジャズを聴きに来たことがあった。その辺を歩き、適当な洋食レストランに入る。
「俺は、ビーフシチュウにするよ。佐藤さんは、何する?」
「私は、このピラフにするわ」
 佐藤は、メニュ―の写真を見ながら、指で示す。待つ間、二人は共通する話題が無い。
黙って、グラスの水を飲む。
「私、デートしたことが無いから、どんな話をするか困っちゃう。金ちゃんなら、経験が豊富でしょう?」
「いや、そんなことは無いよ。いつも孤独さ・・」
「まあ、嘘ね。誤魔化してもダメ。顔に書いてあるわ」
「本当だよ。だって、いつも片思いだから、デートなんて縁が無い」
「え・・」
 注文の品が運ばれてきた。佐藤は何かを言いかけたが、黙って食べ始める。
「本当は、今回のデートだけど・・」
 俺は、正直に話すべきか悩んでいた。
「いいの、分かっているわ。坂本さんの考えね。それに、駅のことも」
「えっ? 知っていたんだ」
「もちろんよ。見え見えだったもの」
「アッハハ・・、な~んだ。バレバレかぁ、しょうがないな」
「知らないのは、あなたたち二人よ」
 食事の間、共通の話題ができた。ようやく、肩の荷が下りた気がする。
「食べたら、どこへ行くつもりなの」
「うん、国会議事堂前公園へ行こうかと、思っているんだ。あそこは静かな場所だから、ゆっくりできよ」
「私の知らない場所ね」
「ああ、意外と知られていないよ」
 レストランを出るが、食事代は佐藤が支払った。俺が財布を出すと、手で押さえられてしまった。
「いいの、これは私が払う。デート指南料よ」
「え~、指南料って、なんだよ」

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