ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 Ⅵ 

 今日は休日なので、寮の食事は朝食だけ。昼と夜は各自で考える決まりだ。
 四人は、公園の近くにある小さな洋食のレストランに入った。時間的に、店の中は空いていた。坂本の案で、別々のテーブルに座る。
「ここのオムライスが美味しいの、私はそれにするわ」
 佐藤が勧める。
「うん、俺もそれにするよ」
 若いウエートレスが注文を聞きに来る。無愛想な顔で、冷えた水のグラスをテーブルの上に置く。佐藤がオムライスを二つ頼んだが、返事も無く行ってしまった。
「ずいぶん、愛想が無い子だね」
「ふふ・・、いつもそうなの。女子寮のみんなも知っているわ」
「へ~、そうなんだ」
「確か、あの子は山形の子よ。訛りを気にして、話すのが怖いのよ」
 ウエートレスの後ろ姿に、俺は不憫を感じた。
「佐藤さんは、怖くなかったの?」
「ええ、関東に来た頃は、私も怖かった。でも、慣れれば平気よ」
 俺は、佐藤の目を見る。愁いのこもる瞳だった。
 同じ瞳を思い出す。心底に封印したはずの瞳。
「どうしたの? 急に私の顔を見詰めるなんて・・、恥ずかしい」
「あ~、いや、ごめん」
 俺は戸惑い、謝った。
「一つ、聞いてもいいかしら?」
 その言葉に、俺の心は不安を覚える。
「ん、何を?」
「金ちゃんに、恋人がいるでしょう?」
 やはり、不安は的中した。どう答えるか困惑する。
「どうして、そんな質問するんだい?」
 俺は冷静さを装う態度で、聞き返した。
「ふふ・・、私には分かるの。凄く苦しんでいる金ちゃんの心が・・」

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