ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 Ⅴ 

 空は快晴だった。池の水面に爽やかな風が吹く。ただ、日差しは暑い。ボートが横に揺れると、佐藤は顔をしかめる。
「揺れるのが、怖いんだ?」
「ええ、怖いわ。だって、泳げないんだもん」
 一瞬、俺の心に邪気が過る。遊び心で、ボートを揺すろうと考えた。
「そっか、でも転覆したら、俺が助けるよ」
「いいえ、もう降りるわ。ね、お願い・・」
 佐藤は眉を寄せ、本当に怖がっていると気付く。俺は揺するのを止めた。
「分かった。じゃぁ、戻ろう」
 引き返す様子を見た坂本が、叫んだ。
「どないしたんや!」
「あ~、もう止めるよ~。岸で待っているから・・」
「ほんまに、しゃあない・・なあ」
 ボートから降りて、岸辺のベンチに腰かけた。
「何が飲みたいの?」
 ちょうど喉が渇いていた。
「サイダーかコカコーラ、どっちでもいいよ」
 彼女はスッと席を立ち、売店へ行く。そして、サイダーを二本買ってきた。
「はい、私の奢りよ」
「あ、サンキュウ―」
 俺は受け取り、直ぐに飲んだ。喉元を爽快感が伝わる。
「あ~、うまい」
「そうね、風も気持ちがいいわ」
 空を見上げ、そよ風を顔に誘う。その仕草は、純な彼女を見せつける。
 池の中ほどから、坂本たちの笑い声が響く。
「金ちゃん、あなたたちは外国へ行くの?」
 俺の顔をまじまじと見つめる。俺はドキッとした。
「ああ、卒業したら行くつもりだ。どうして?」
「ううん、なんでもない」

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