ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 Ⅳ 

 坂本が現れると、互いに名前を伝えた。
「ほな、金ちゃん行こうか~」
「えっ、どこへ?」
 女の子が案内する近くの池らしい。そこは、歩いて行ける場所だ。
「金ちゃん、右の子は自分に任せるからな」
 寮生活を始めて直ぐに、俺の名前を金ちゃんと呼ばれるようになった。誰が最初に呼んだのか、俺にも分からない。
「なんで、俺が左の子なんだ?」
「左の子、ちゃうよ。金ちゃんは右の子・・」
「だって、右は自分って言ったじゃん」
「ほんまに、おもろい話や。大阪では、相手を自分と言うんや」
「なんだ、そうか。紛らわしいな・・」
 坂本は、左の子と並んで歩いた。俺は仕方なく右の子に話し掛ける。
「佐藤さんは、どこ出身なの?」
「青森の弘前よ。知っている?」
「ああ、地名は知っているよ。だけど、行ったことがない」
「ふ~ん。それで、あなたは?」
「俺は、群馬県の高崎だよ」
 佐藤は、首を傾げ考えている。特に美人タイプではないが、色白で仕草が可愛い子だなと感じた。
「知らないんだ?」
「うん、群馬県は知っているけど、高崎は知らない」
「そうか、それにしても、東北訛りじゃないね」
「仲間同士なら訛りがでるけど・・」
 話しながら歩いているせいか、池の公園に早く着いた気がする。
「金ちゃんは、ボートが漕げる?」
 池には、ボートの貸し出し場があった。既に、池の中ほどに数隻が見える。
「ああ、上手に漕げるよ」

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