ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅧⅩⅠ 

「確か、前に話したよね。仲の良い三人が、それぞれの子供を結婚させる話さ」
「ええ、聞きました。覚えています」
 しかし、三人の選んだ道は、決してまっすぐな道ではなかった。ただ独り残った明恵母さんが、諦めかけていた約束を果たすことになる。それは、俺と真美の母親が、書き残した明恵母さん宛の手紙に関連した。
 手紙を読んだ明恵母さんが、オヤジさんに打ち明けて協力を依頼した。俺の居場所は、既に知っている。ただ、真美の所在が判明しない。
 明恵母さんは、箕郷の実家に行き消息を確かめる。預けた真美の養父母と、久しく連絡が取れないという。
 二年後、明恵母さんに異変が起きる。夢の中に、真美の母親が現れ始めた。心霊学を学んでいるオヤジさんが、明恵母さんの不思議な能力を認める。その力を活用して、真美の所在を探すことにした。
 ただ、受け止める能力が真美に無ければ、明恵母さんの能力は発揮しない。オヤジさんと明恵母さんは、運に任せ一意専心で努力を試みる。
「こうして、真美さんの心に近づけた。真美さんには、非常に高い能力があった」
「それで、俺の心を読むことができるんだ」
「そうだよ。それも彼女の能力の一つだ。なんと不思議な子なんだろう」
「ふ~ん。凄いと言えば凄いけど、怖いですね」
「怖くは無いさ。幽霊でもなければ魔女でもない。洸輝君にとっては、優しい天使と思えばいいんだ」
《そうか、優しい天使か。ふふ・・、でも怖い天使になるかも・・》
 真美と明恵母さんが戻って来た。
「洸輝、怖い天使って、誰のことよ?」
《ああ、またしても、余計なことを考えてしまった》
「だから、余計なことを考えて、怖い天使を思ったのでしょう。それって、私のこと?」
「いいや、真美は優しい天使だよ。ねえ、オヤジさん・・」
 明恵母さんは、笑った。
「ほらほら、仲の良い夫婦が、喧嘩したらダメでしょう」
「いや~、困ったもんですよ。俺は真美の前では、何も考えられない。心が見透かされてしまう」
 明恵母さんとオヤジさんが顔を見合わせる。
「私も同類だよ。お互いに困った者同士、頑張ろう・・」
 真美が、唖然とした。
「お母さん、お父さんと洸輝が困った者同士って?」

×

非ログインユーザーとして返信する