ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅧⅩ 

 駐車場に車を停め、公園の敷地内に入る。林に囲まれ人影が少なく、俺が想像した以上に静かな公園であった。
 公園の中心に大きな池があり、その脇に日本風の小屋が見えた。
「お母さん、あれが東屋よ」
「へえ~、本格的で、凄いわね」
「トーマス小父さんも、ボランテアしたそうよ。職人さんの技能が直接に見られて、手伝うのが楽しかったって・・」
「そうでしょうね。日本では、もう簡単に見られなくなったわ。あら、池の向こう岸に鳥居が・・」
「ええ、その横に大きな石が並べられ、上毛三山を模写した庭があるの」
 仲良く手を繋いで歩く、真美と明恵母さんの姿。二人の様子に、俺は幸せを感じた。
「洸輝君、嬉しそうに見ているけど、どうしたのかな?」
「はい、あの二人が幸せに見えて・・」
「そうだね。今回の運命は、あの二人が主役だと思う。私は、前から知っていたよ」
「えっ、何を知っていたのですか?」
 俺はオヤジさんの言葉に驚く。明恵母さんと真美、二人に関係することなのだろうか。オヤジさんは、何かを知っている。
「実は、運命の物語は、明恵の意志によるもの。と言うか、君や真美さんのお母さんと明恵が、描いた物語だった。それを現実に結び付けたのが、最後に残された明恵の不思議な能力かもしれない」
 オヤジさんの話は、直ぐに理解できるものではなかった。俺の運命は、三人の女学生の夢物語から始まった。俺の軽い脳は洞察力が乏しく、どのように解明すればよいか判断に苦しむ。
「じゃあ、俺と真美の出会いは、作られた運命だったのですか?」
 俺の強い眼差しを、オヤジさんは軽く受け止めた。
「いいや、誤解しないでくれ。作られた運命ではない。運命なんて、人間の力では作れないよ」
「母さんたち三人の意志で描いた、運命の物語でしょう?」
 オヤジさんは、池の向こうで手を振る二人の姿を眺め、言葉を選んで説明を始めた。

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