ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅤ 

 車は市街地を出ると、幹線道路を走った。しばらくして、脇道にそれる。細い林道は、まるで紅葉のトンネルだった。
「凄いロマンチックな景色ね。あなたたちにぴったりよ」
 明恵母さんがうっとりと眺め、隣に座る真美に呟いた。
 トンネルをくぐり抜けると、前方の視界が広がった。そこは、広大な墓地である。片隅に白亜の教会が、ひっそりと建つ。
「近くで見ると、かなり古そうな教会のようだね」
 オヤジさんが、興味津々に聞く。真美が、トーマス小父さんに尋ねた。彼が、教会の歴史を細かく説明する。
「この教会が建って、二百年になる。昔は、洗礼などの儀式や結婚式、葬儀が行われた。残念なことに、今では僅かな人たちだけになってしまった」
 真美が、トーマス小父さんの話を通訳する。
「なるほど、そんなに古いんだ。後で、中を拝見したいね」
「ええ、見られるわ。だって、私たちは、ここで結婚式をするのよ」
 トーマス小父さんの車は、教会の前をゆっくり通り過ぎた。
 墓地の中ほどに、ロータリー式の駐車スペースがある。車は、ここに停められた。歩いて数分の場所に、真美の母が眠る墓地がある。真美と俺は手を握り、十字架が並ぶ墓地の合間を歩く。厳かな雰囲気に、俺は緊張して喉が渇いた。
「緊張して、水が飲みたいな・・」
「もう少しよ。我慢してね」
 握る俺の手を、優しく小刻みに振る。
「ここよ、ママがいる場所は・・」
 十字架の前に、名前が書かれた石碑が埋められている。真美が、用意された花束を、石碑の上に置く。石碑に刻まれた母の名をなぞる真美。
「洸輝、傍に来て! ママに紹介するから・・」
 俺は真美の横にしゃがむ。
「ママ、私のダーリン、洸輝よ」
「洸輝です。初めまして、佳代の息子です」
「ママが、私たちを結びつけたのね。ありがとう・・」
「亜沙子、ありがとうね。あなたが・・、約束を・・、守ってくれたわ」
 明恵母さんが、後ろから声を掛けた。
「ママ。明恵さんが、私たちのお母さんになったの」
「ええ、私には子供ができなかったけど、ようやく母親になれたわ」
「亜沙子さん、お久しぶりだね。私も二人の父親になれた。真美さんと洸輝君は、楽しく幸せな家庭を築くと思う。安心して、見守って下さい」


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