謂れ無き存在 ⅦⅩⅠ
部屋に戻った二人、食事会の高揚が続いていた。真美が英語を交えて喋り、俺の軽い脳は沈黙。ただ、理解できる範囲で、頷くしかなかった。
「どうしたの? 黙ったままで・・」
「いいや、聞いているだけで、十分だよ」
「あ~、分かった。他のことを、考えているのね」
「いいや、何も考えていないよ」
「いいえ、考えているわ。これからの事でしょう?」
「はあ? これからの事・・。これから、どこへ行くんだい?」
真美がスカートの端を摘んで、妖艶な仕草を見せる。
「ふふ・・、ワッツ ドゥ ユウ ウォント ミ トゥ ドゥ?」
その様子を理解し、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
「イェッサー、マイ メッチェン!」
二人はシャワーを浴びた後、ゆっくりと愛を確かめ合った。
いつの間にか眠っていた俺は、体を揺すられて目を覚ます。
「うん? どうした、真美?」
ホテルの外から、長く鳴り続けている踏切の信号音が聞こえた。
「ほら、窓から外を見てよ」
俺が外を覗くと、ゆったりと走る貨物列車が目に入った。変哲もない貨物列車だ。
「特に、変わっていないよ・・」
「良く見てて、その内に分かるから・・」
俺は、しばらく眺めていた。
「えっ、いつまで続くんだ、この列車は?」
異常に気付いた俺は、振り向いて真美の顔を見る。彼女は、ぐっすり寝ていた。
《本当だ。これは珍しい光景だ。既に十五分は過ぎている。今更、数えても意味が無いけど、数えてみるか》
暫く数えていたが、反対方向からもやって来る。途中で諦めた。
翌朝、階上のレストランで朝食をする。オヤジさんたちもやって来た。
「いや~、驚いた。洸輝君は、夜の貨物列車を見たかね?」
「ええ、見ていました。驚きです。数えていましたが、諦めましたよ」
「そうさ、私も数えてしまった」
その話に、真美が説明をしてくれた。