ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅣⅩⅤ 

 俺は肉の脂が苦手だ。250gの特大ヒレステーキを注文した。真美も負けずに注文。
「真美、本当に大丈夫か?」
「平気よ。お金も胃袋も・・、安心して食べなさい」
 真美は、店内を見渡し、何故か嬉しそうな様子。
「どうして、そんなに嬉しそうな顔を、しているんだい?」
「んん、だって、今までは来れなかった場所よ」
「どうして? いつでも来れる場所だろう?」
 彼女は、相好を崩し説明する。
「だって、女の子ひとりでは来れないわ。前から来たかったのよ。特に洸輝と一緒に来れて幸せ・・。大好きよ、ダ~リン!」
「アハハ・・、それは良かったね」
「うふふ・・、飲み物を持って来るね。何が欲しい?」
「メロン・ソーダでいいよ」
「えっ?」
「メロン・ソーダ!」
「はい、はい、子供の飲み物ね」
 図星を指され、血圧が一気に上昇。ムッとする。俺は待っている間、反論する言葉を考えていた。
「はい、召し上がれ」
 メロン・ソーダのグラスが二つ置かれた。
「おっ、・・」
 俺はグラスと彼女の顔を、交互に見比べてしまった。
「私も飲みたかっただけよ。悪いかしら?」
「だ、だって、子供の飲み物だからと・・」
「だから、どうしたの? 一緒に同じ物を飲んだらいけないの?」
 やはり、俺の軽い脳は、反論の能力に欠けていた。俺は惨敗だ。
「ふふ・・、やっぱり洸輝は子供ね。だ・か・ら、大・好きなの・・」
 そこへ、注文のステーキがジュジュと音を立てながら、テーブルに置かれた。俺の軽い脳は、負け戦から逃げ出すことを指示する。
「ワォ、さあ、食べるぞ!」
 喜んで食べる俺の様子を、真美はしばらく眺めていた。
「真美! 俺の不味い顔を見ているより、こっちの方が美味しいぞ」
「アハハ・・、そうだね。私もお腹が空いたわ」
 俺は真美の心を感じた。こうして戯れながら過ごす時間に、彼女は飢えていたと思う。これからは、決して寂しい思いをさせない。俺は心に誓った。

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