ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅢⅩⅥ 

 明恵母さんが懐妊した喜びを、手紙に認め送ったらしい。俺の母親についても、書かれていた。ただ、三人の交流は徐々に薄れ、便りが遠退く。真美の母親は、寂しさを日記に綴るようになった。
 その後、懐妊した真美の母親が、ふたりの親友宛に報告の便りを送る。だが、返事が来ない。
 数か月後に、漸く明恵母さんから返事が届く。逸る気持ちで封を開けると、思いも寄らぬ内容が書かれていた。
 便箋を持つ指が震え、友の悲しみに打ち沈む。その心の様子が、日記帳の乱雑な文字の姿に表れた。
 手紙の後半には、俺に関する内容が書かれてあった。俺を明恵母さんに預けることである。俺は自分の目を疑うが、紛れもなく現実に書かれていた。
 我が子の死産から立ち直れず、悲嘆にくれる明恵母さんは、已む無い心境から依頼を断ったという。その苦しい心情を真美の母親に伝えていた。
 親友を裏切った自分が許せないと、謝罪の言葉を幾度も書き綴る明恵母さんの手紙。
 俺は複雑な気持ちで、日記に目を置き続けた。しかし、読み続けるうちに、俺の心を打ち砕く文字へと辿り着く。目の前が霞み、涙が日記の上に零れ落ちる。
《まさか、そんなはずは・・。嘘だ。嘘だろう》
 俺ははっきり感じた。俺の精気が体中から滲み出て行く。
「洸輝・・、黙っていてごめんね」
「あ~、嘘だ。真美、この日記・・、俺は信じない」
 俺を捨てた母親を恨み続ける反面、必ず迎えに来るものと信じていた。
 施設の仲間が親に引き取られる光景を、幾度も羨ましく眺めた記憶が残る。俺とヤッちゃんは、二階の窓からこっそりと見送った。約束の日が必ず訪れると願い、ふたりの手は、互いの意志で固く握られていた。
 日記には、母親の死が文字となって刻まれている。俺を施設に預けると、そのまま北陸の海に身を投げたという。
 警察が明恵母さん宛の遺書を発見。明恵母さんが検分に呼ばれ、俺の母親であることを確認した。
 遺書には身投げの詫びと、母親の死を俺に知らせないで欲しいと懇願。明恵母さんは、その約束を守り続けた。ただ、気懸かりで施設を訪れていたのであろう。
 俺の心は、頑なに否定する。望み続ける母親との再会を、簡単に諦めることができなかった。
《会えなくなった虚しい現実。はぁ~、俺はどの様に受け止めるべきか、思いつかない。う、う~ッ、なんだよ俺の生き様は・・》
 真美が俺の両手を掴み、彼女のしっとりした温もりの頬に摺り寄せた。

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