ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅢⅩⅢ

 半時後、別れを告げ箕郷に向かった。
 運転する真美が、前方に注意を払いながら、意外なことを俺に告げる。
「ねえ、洸輝。実は・・、お母さんの心が、読めてしまったの。お母さんの心、とても悲しく辛い過去を持っている・・わ」
 俺は信じられず、真美の横顔を見詰めた。彼女の頬に涙が零れ落ちる。俺は咄嗟に右手の人差し指でそっと拭く。その濡れる涙に、何故か俺はまごついた。ほんの僅かな沈黙が、とても長く感じてしまった。
「真美が泣くほど、悲しい過去なんだね?」
「ええ、あなたにも関係することよ」
《えっ、俺に関係する? どんなことだろう・・》
 俺は真美の顔を見ず、ヘッドライトが照らす光景を眺めた。ぼんやりと見える景色は、一瞬に後ろへ飛び去って行く。
「俺と明恵母さんの関係?」
「そうよ。とても複雑な感情だったわ」
「複雑な感情? じゃあ、これから一緒に暮らすけど、どうすれば・・。困ったなぁ」
 真美は、チラッと俺の顔へ目線を向ける。その気配に俺は目線を合わすが、既に前方へ向けられていた。
「いいえ、心配ないわ。詳しいことは、家に帰ってから話すね」
 俺は直ぐに聞きたいと思ったが、真美の言葉に従うしかなかった。しかし、家に着くまで悶々と時間を過ごす。
《心配ないと言われても・・。やはり、不安を感じる。あ~ぁ、悩んじゃうな》
 ようやく家に戻れホッとする。たった一晩のみ過ごした家なのに、懐かしさが心に染み入る家であった。
 夜になり体が冷え込む。俺は急いで灯油ストーブに火を点ける。ソファに座り、家の中が温もるまでじっと我慢した。キッチンでお茶の用意をしていた真美が、俺の様子に驚いて目を見張る。
「まあ、何を固まっているの?」
「う~、寒いからさ・・」
「うふふ・・。寒がり屋さんなのね。面白いことを知ったわ。はい、熱い紅茶よ」
 両手に持っている紅茶カップを、目の前に置いた。
「あ、ありがとう」
 俺の横にピタリと体を寄せて座る真美。
「紅茶を飲めば体が温もるわ。それに、私が防寒具になるからね」

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